百参拾弐


惷香はタバコを買い手持ちの荷物にタバコを詰め込み

宿屋へと足早に向かった


人混みを避けながら宿屋への道を進む










ザァ――――










空気が流れた



惷香の足が止まる








ジャラリ…









白地に炎の様な赤い模様の衣が揺れている








「1人か?」


「ほ…焔…」









焔はスゥ…っと惷香に立ちふさがる様に近寄る








「私なんかに何の用?」








惷香の纏わりつく空気が殺気立った








「そんな邪険にするな
別に戦いに来た訳じゃない」









焔はフッと笑みを零す












闘神 焔太子――




何故か魔天経文を狙い



刺客まで送り込み
三蔵や私までの命を狙う人物――









焔は惷香をジッと見つめる








「何…?」


「お前すら 忘れてしまったと言うのか?
天界を 俺を…」


「ッつ――!?」









天界の記憶はある
しかし焔の事は覚えてはいない



知らない と言っても過言ではないだろう…









「何故だ
何故俺を忘れる…っ!」








焔の瞳には惷香が映るのが見える程の距離で

焔は切ない顔で惷香を見据える


惷香は焔が1歩近付く度
1歩後ろへと下がる








「俺は…俺は天界でお前だけを見て来た
だがお前は金禪を選び
お前は天界から姿を消した…
俺はお前だけを探した
やっと見つけ出した時でさえ
お前はまた金禪を選んだと言うのかっ!」








焔は惷香の両肩を掴み
焔の胸元へと引き寄せた



惷香の手からは買った荷物がドサリと床に散らばり
鎖と胸の間に惷香を閉じ込めた








「――――ッ!?」








驚き焔に抵抗するものの
適う筈もなく抱き締められたまま動きが取れない







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