百拾参
惷香はドアの前で立ったまま三蔵の様子を伺う
「あの…三蔵
何かあった?」
「何かって何がだ」
「何か不機嫌…?」
「そんな事てめぇに関係ねぇ」
「そう…だけど…」
昨日三蔵に救われ
突然冷たく不機嫌になるのは自分のせいではないかと
惷香は不安と心配が混ざっていたのだった
「もし私が何かしたのなら…
謝ります」
「あ?」
三蔵はメガネの上から視線を惷香へと移し眉間の皺が深くなる
「昨日の今日で三蔵が不機嫌になるのは私のせいでしょう…?」
「アホかてめぇは」
三蔵はメガネを外すとフーっと深い溜息を付いた
「すみ…ません…」
「それだけか?
なら早く出て行け」
「…失礼します」
惷香は三蔵に1礼すると涙目で部屋から出て行った
「…アホなのは俺だ…」
三蔵はポツリと呟いた
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