百九



―調整室―







薄暗い部屋で椅子がギシリと音を立てる

机の上には散乱した書類やパソコン
飲みかけのコーヒーがある


そこでメガネが暗闇の中で妖しげな光りを放つ









「あら〜失敗しちゃったみたいね」








厭らしい軽口で白衣の男はウサギの人形を宙に放る


パシッと掴むと口元がニヤリと笑う









「まだ手はある ってね」








クスクス笑う白衣の男は隣の女に目配せをして笑い続ける


隣に立つ白衣の女は怪訝そうな目で男を睨んだ











―山奥の町―




三蔵の腕の中で眠りに付き
目が覚めた時は三蔵に抱かれたまま

三蔵は壁に寄りかかり片膝を立てて座った体制で眠りに付いていた


脇と肩に回った三蔵の腕を静かに下ろし 立ち上がると背伸びをした


息を吐くと白い


寒い町にいるのだと今更ながら気付いた


カクッと三蔵が壁から頭がずれ
パチリと目を覚ました


三蔵は慌てた様子で左右見渡し


立ち上がって惷香の姿を確認すると安藤した表情を見せた









「勝手に彷徨くんじゃねぇよ」


「おはよう 三蔵」


「おはようじゃねぇ
話を聞け」


「ありがとう 三蔵」


「――チッ」









三蔵は不意にお礼を言われ戸惑ったのか 視線を露骨に反らすと頭を掻いた








「朝飯の時間だ
あいつらも下の飯所に来る
顔出してやれ安心するだろう」








三蔵は立ち上がるとテーブルの上に置かれたタバコに火を着けた


部屋に白い煙がフワリと漂った






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