百八


窓をパタンと閉め
フッ…と惷香を見ると


惷香の目から涙が流れていた――









「な…おいっ!?」








三蔵は慌てて惷香に近寄り肩を掴んだ
グイッと身体を揺らすが惷香は反応は示さない


ただ涙を流している



三蔵はベッドに座る惷香に視線を合わせる様にしゃがみ視線を合わせる









「…おい
惷香」


「…………で…」


「あ?」


「………いで…」


「何だ?
何が言いたい」


「置いて…行かないで…
もう…貴方の後ろ姿は…嫌…」









惷香は虚ろな目で涙ながらに言う









「…ッ!!」









三蔵は惷香の両肩を掴み ガクガクッと揺らす








「お前は誰を見ている!?
何を見ている!
お前はココにいるんだろうがッ!!」









惷香は三蔵の声に反応したのか
三蔵の瞳に視線を合わせた








「お前の居場所はココなんだよ
心を…捕らわれてんじゃねぇ」


「………
貴方も………私を置いて行った…
貴方も………
私は必要にされていな…」








三蔵は掴んだ肩をそのまま引き寄せ惷香を三蔵の胸に抱き寄せた


腕で頭から背中まで隠すかの様に
包むかの様に

抱き締めた――









「俺には必要なんだよ
置いて行かねえ
ずっとココにいろ」


「さん……ぞ…?
三…蔵ォ…三…」








惷香はそのままガクリと眠りに付いた

三蔵の腕の中で
久しぶりの眠りに付いた








「…やっと帰って来やがったか
バカ女が」









三蔵はそのまま抱き締めたまま
天井に向かって溜め息を付いた


心を取り戻し
ゆったりとした気持ちで
三蔵の胸で眠る惷香は


どこか笑って見えた……






.

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