百弐
惷香に近寄ってみても反応もなければ振り返る事もしない
ただボンヤリと空を見上げているだけの惷香に
三蔵は何が出来るのか皆目見当も付かなかった
「おい」
声を掛けても振り向く事も返事する事もない
振り返って笑う事のない彼女に
三蔵も戸惑うしかなかった
その日の夜
惷香を先に寝かせると4人でどうするべきかを相談をしていた
「三蔵
今までにこの様な事例はないのですか?」
「知らんな
何せ異世界から来た人間の話ですら曖昧で資料も少ない
そんな中であんな風になるのは書物でも見た事もない」
三蔵は腕を組むと
煙草を咥えながら眉間に皺を寄せる
「悟空
彼女は置いて行かれたと言っていたそうですね?」
「あ、ああ
確かまた置いて行かれたって…どうゆう意味?」
「そうですね…
これは憶測でしかないのですが…以前彼女は前世の記憶があると言っていましたよね?
それに関係しているのではありませんか?」
「ってーと
その前世で一緒にいた仲間か?
そいつらに置いて行かれたって事っつー訳か」
「あくまでも憶測ですが
彼女は前世の記憶と能力を備えています
それが今混乱しているのかもしれません」
4人の間に沈黙が流れた
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