なんだかカサカサ聞こえ始めたのに、私は目覚める。
目を開けると明王くんが元々買っておいたのであろうパンを食べていた。
「おはよ」
「…おはよう…」
寝ぼけ眼のまま起き上がると体にかけてあった上着の上に毛布がかかっていたのに気付いた。
「明王くん、毛布ごめんね」
言うと明王くんは
「…いや、逆にベッド取っちまってサーセンした」
もごもごしながら明王くんがいう。
そんなこと言ったって明王くんのベッドじゃない。言うと、なんかだめなんだそうだ。

そう言えば今何時だろうと思って時計を見ると八時半。明王くんは何時に起きたんだろう、思って聞いてみると六時くらいに自然と目が覚めたのだそうだ。
やはり子供の体はサイクルが違うんだな。
朝早く起きて辛くないとかうらやましすぎる。
「おなかすいたなら起こしてくれればよかったのに」
「いや、めっちゃ爆睡だったから起こさない方がいいかなと思って」
と、にやにやし始める明王くん。なによ。言うと
「ごおごおいびきかいちゃって」
と、指差して笑う明王くん。私は顔を真っ赤にして嘘だろと明王くんにつっかかる。
「だ、だって私いびきとかかかないって言われたもん!はぎしりはあるらしいけど…!」
「はいはい歯ぎしりぎりぎりもしてたよ」
もう元からだったけども、デリカシーなさすぎて嫌になる。
「お前絶対女の子にもてないだろ」
言うと、別にもてなくとも生きていけますけどとか、体は子供だけど本気で殴ろうかとも思ってしまった。
「吹雪を見習ったらどうだ」
吹雪と言うのは、イナズマジャパンメンバーの一人。イケメンとしてかなり人気だ。
「えぇ、俺あいつ嫌いだわ」
「なんでよ」
「あいつ何考えてんのかわかんねぇもの」
とか、見るからに幼稚園児がコーンポタージュすすりながらそんなこと言ってるのを見てなんかシュールで笑えた。
「何、お前ああいう奴がいいわけ?」
にやけながら言われる。なんか明王くんに言われると腹立つ。
「吹雪はレベル高すぎて恋愛対象には見れんわ」
「へえー」
さもつまらなさそうにいう明王くん。なんだよ。
と、思ったら
「そういやお前とこういう話したことなかったな」
うん、それは確かに。
「だって明王くんこういうのなさそうじゃん。」
「お前は普通にイケメン好きそうだけどな」
よくわかったな。
「ヒロトくんみたいなのはドストライクですよね」
「まじで」
なんか引いてるような顔つき。
いや、まじだけどそんな本気でもないんですけど。
「あんな血色悪い奴がいいのかよ」
と、何故か笑いだす。吹雪の時もそうだったけどめっちゃこいつ失礼だな。だから友達できねんだよ。
と、心の中で毒づいてやった。
そういえば
「明王くんはどうなの?」
何故かすごく気になった。
明王くんは、少し考えて
「お前はないから安心しろ」
と、また笑われながら指差された。
「その言葉そっくりそのままお返しします」
まあ、そうでないと異性同士友達なんて続けていられないが。
なんとなくまた腹が立った。見せないようにしたけど。ちょっと腹立った。

それから私は顔を洗って歯磨きして朝食を取る。そしてまた歯磨き。
ゆったりした時間で本当に連休って素晴らしい。
でも、それにしても明王くんはいつ戻ってくれるのだろう?
今の明王くんは可愛いけど、ずっとこのままじゃ心配だ。
明王くんの小さくてまあるい背中を見た。
そうだ、食器洗わなくては。
私は明王くんと気楽に河原の階段で話をしていた時の光景を思い出してしまう。
ずっとは寂しいなって思った。
ずっとは嫌だなって思った。
だってこういうのって、本当に五分とか十分とか、遅くても一日で治るじゃないか。
それはアニメとかの世界だけど。

昨日感じた水道水の冷たさは昨日ほど感じられなかった。







皿洗いが終わると、私はお昼ご飯の買い出しにスーパーにでかけた。
スーパーでそう言えば今日何にしようか決まっていなかった。
家にお留守番の明王くんに電話をかければ、なんでもいいとのこと。
そういうのが一番困る。
そんな料理レベル高くないからレパートリーも数少ない。
だって中学生なんかホントなんにもしないぜ。気楽に生きてるぜ。
お母さんのありがたみがわかった。

でも、よく考えれば明王くん一人暮らしみたいなもんだよな?
夕飯とかどうしてんのかなって思った。
でも以外とできそうなんだよな料理とか家事とか。
負けてられないなと思いながら夕飯とお昼ご飯のレシピを考えた。







「ふーん。あんかけチャーハンね。いんじゃね?」
もぐもぐしながら言う明王くん。うん。自分が食べても我ながらいける。
ふと明王くんが私の顔をじっとみ始めたので
「なんだ惚れたか?」
「お前男できねえな」
もっと面白いツッコミを期待していたのに。
「なんかお前まじで母ちゃんみてえ。」
言って八重歯を見せて笑った。
明王くんのお母さんってどんな人?
聞こうと思ったけど、なんとなくやめて置いた方が良いなって思ったのでやめた。
そして、私もにかっと笑って頭を撫でてやった。


そしていつもの仕事である皿洗い。
なんか皿洗いばっかしてるような気がする。
だけど、次に問題なのは洗濯物。
私がやることだけど、全然私がやることだけど。
明王くんのぱんつ干しても文句言われないかな?
いや、逆にぱんつだけ残すとかのが察せられるよなと思い気にしないようにして明王くんと私のセンターを干す。

仕事が一段落すると、なんだか静か。
何だろうと思ったら明王くんは床でねていた。
お昼寝の時間らしい。


もう春だけどまだ肌寒いので、私が持ってきていたひざ掛けをかけてやった。
安らかな寝息と可愛い寝顔を見て、私もいつかこんな子供作れたらいいなと思った。






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