今日は不動明王と会う約束だ。
不動明王というのは、読みも意味もよくわからないがぐぐると大層縁起の良さそうなそうな、ご利益のありそうな御地蔵様というかお釈迦様というかがでてくるが私の言う不動明王はただの中学生だ。
生意気で気難しくて扱いのめんどうなただの男子中学生だ。
そして私の唯一無二と言ってもいいくらいの仲いい友達だ。そして友達のいないあいつにとってもきっと結構大きい存在だ。
そんな親友の明王くんと会うのはいつものこと。
部活のない日とか、学校休みの日とか、とにかくお互いの時間が少しでも合えばここに来てただくっちゃべって過ごすだけ。
いつもこの河原の階段で話をしている。
いつも大体明王くんのが先に来てるが今日は私が先だったようだ。
ううっ今日も寒いわ。冷たい階段に座り明王くんを待つことに。
白い息を吐いたところで
「おう。」彼なりの挨拶が来る。
「おう。」私も同じように返した。
「これやるよ。」と、差し出して来たのはあったかいココア。
「え、やだくれるの?」
ありがとう、受け取れば得意げな顔をするのだ。
「甘。うま。」さっきまで冷え切っていた体も暖かくなって来る。
ふう、先ほどよりも少しだけ白い息が出る。そんな中明王くんが口を開いた。
「お前も明日円堂んち行くのかよ?」
明日は、イナズマジャパンメンバーが集まるということで私も明王くんも呼ばれていた。
きっとみんなでしゃべり倒して楽しいんだろうな。
ということで、
「行くよ。明王くんも行くっしょ?」
そう言うと彼はうーん、と唸る。
「まあ俺は最初から行く気なかったしな」
当然来る物だと考えていたから私は一気に変な焦りがでて来る。
「なんでよ!」「いや、なんでよって…」
少し怒り口調になる私に困ったように明王くんが返す。
「来てよ」「やだよ」
「お願い…」「いやいや…」
「来いよ」
さすがに機嫌をそこねてきた私に明王くんが
「何でそこまでして俺を連れて行きてんだよ」
呆れたように言う明王くん。
「何でそこまでして来たくねんだよ」
逆に聞き返すと明王くんは、はぁあと大きな大きなため息をついて、
「行きゃいいのかよ?」
折れた。

だが、私はこの時しつこく誘ったことを後に後悔するなんて思いもしなかったのだ。










円堂くんの家ではやはり集まった人数も多く、大いに盛り上がった。
すみっこにいたがる明王くんを放っておくのはいやだったので常にとは言わないが隣に居た。
誘ったの私の方だし、明王くんもいつもの如く他のメンバーとなんて全然話さないし。
私もなんだかんだ明王くんとだらだらしゃべってる時間のが多かったかもしれない。

そろそろお開き、という時間になって片付けをして、みんなそれぞれ別れた時間は午前1時過ぎ。
明王くんが時計を見て、「送る。」とだけ言って来た。
なんか無理矢理誘って悪かったなと、この時になって反省した。

なんとなく会話がない。気まずいとかはない。
これはこれで心地よい物だ。明王くんはどうなのだろうか。
わりとすぐに家に着いた。
「ありがと」
お礼を言うと明王くんは、じゃあなとか言う。
「もう帰っちゃうの?」
言うと明王くんは、「何時だとおもってんだよ」笑う。
そんな明王くんに
「今日強引に連れてしちゃってごめんね。」
しつこく誘ったことを謝った。一応。
明王くんは「ホントだよ。」言ってにかって笑う。
これで私の気持ちはすっと楽になる。
明王くんはみんなでいる時は絶対笑わない。
それが嬉しいのは心を開いてもらってるってわかってるからか。
「今度二人ででかけようよ。」
デートデートとふざけ半分で言って見たら、なんか自分で言っといて照れた。
「付け上がんな馬鹿。」
明王くんはぺちっと軽く私の頬を手の甲で叩いた。
「ちべてっ」彼の手の甲で冷たさに体をはねさせると彼は今度は両手を私の頬に。
冷たくてそわわあってなったけど、おい、それより…
「…」
たぶん真っ赤であろう私の顔を見て、彼も気づき手を離した。
「さ、サーセン…」
「い、いえ…」
なんだこれめっちゃ気まずい。つかかゆいし恥ずかしい。
「じゃあ今度こそ帰るわ。」
「う、うん。そうだね…!」
さすがにもう夜遅いし、今のでどうすればいいのかわからなくなって今日はこれでお別れすることに。
お互いめっちゃぎくしゃくしながら手を振った。


なんだか、いつもより視線が近くなったような気がした。

距離が近くなったからか、
私の背が伸びたのだろうか?

きっと後者だろうなと、いつもより、何故か自分を勝手に押さえつける変な私が居た。





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