バレンタイン夢








今日も寒い。そう思いながら家へと足を進める。
専門学校に、その後のバイトを終えた所だ。今日は世で言うバレンタインデー。
は、そんな日に心騒がせるほど若くはない。そう鼻で笑っている間に家についた。
別に非リアだからバレンタイン?へーって言うわけじゃない。
ていうか、渡す相手ならいる。一応、いる。いるけど、
私はアパートの部屋の鍵を差し入れ、小さくため息をひとつ。
「ただいま…。」

しん、と反応はない。でも1人暮らしではない。
部屋には私の恋人、不動明王がただぼーっとテレビを見ている。
七年間付き合っていたっけな。もう付き合いも長い間のでよくわからない。
時間は9時半を指している。ふう、とまた小さいため息をつく。

明王は全然私になんか反応しない。ずっとムスッとテレビを見ている。
別に普段がこういうわけでもないのだ。ただ、昨夜喧嘩してそのままなのだ。はあ、疲れてるのに。またため息をつきたくなったけど、やめた。
多分そのため息でまた喧嘩になる。
つきたいため息を飲み込み、自分の夕飯を作りにかかる。
一応、
「明王、夕飯食べた?」普段通りのトーンで聞く。
「電子レンジ」
は?今の問いにその答え何、と苛つきを覚えたのも一瞬、
彼の言葉を聞き、電子レンジを開けてみると、電子レンジの中にはおいしそうなおかず。
おまけに鍋の中をみたら味噌汁まであるではないか。ヤバい、明王愛してる。

私はごはんと味噌汁とおかずをテーブルに持って行っていただきまあす!
「おいしい。」まじおまえ良い子。もさもさの頭を撫でると、手を払いのけられたけど、照れてるみたいなので良し。
おいしい、おいしい。言いながら食べると、なんか明王はちょっとにやけてる。何こいつ。
たぶんもう機嫌治ってるな。単純め。…いや、単純ではないか。

食べ終わり、洗い物を済ませておく。さっき明王の髪を触った時は髪が若干濡れていたので、風呂は済んだんだろう。
じゃあ私も入っておこうと風呂へ。
ついでに洗濯物をチェック。洗濯機の中にはどれだけ洗濯物があるだろうと確認したが、中は空っぽ。
もうホント、明王まじ愛してるから。
これでゆっくりお風呂に入れます。


チョコ、あげなければ。実は作ってあったのだ。
バイト先の方や、友達や周りの人にはチョコをあげているけど、店で買ったものだ。
手作りは君、明王の為だけにしたんだからね。
待ってろよ、くくっ湯船に揺れながらにやけた。



風呂からあがり、髪を乾かしながらチョコどこに置いておいたかな、と考える。ああ、バッグの中にあるんだ。
居間に戻ってテレビを見る明王の背中を見た。たぶんこいつも今日は疲れていたはずなのに、いやはややってくれるね。
バッグからこっそりチョコの入った小さな紙袋を取り出す。紙にしなければよかったかもしれない、カサカサうるさいや。
明王の丸くなってる背中に遠慮がちに抱きついてみる。先ほどの様子や家事をやってくれたことからして、怒ってないとは思うけど昨日の今日だしなんとなく。
「なんだよ。」不機嫌そうな声音。でも、声音だけで実際は不機嫌じゃないぞ。よかった。
私は明王の胸元にチョコを持っていく。
「遅くねえか」呆れたように笑う。
「いいじゃん。今年は手作りだからさ」言うと、なんか嬉しそう。顔がなんか、うん。緩んでる。
「いつも買ったもんなのに珍しいじゃないですか。」
「今年はあげる人多いからお金なくなっちゃってさ。」
君にはお金かけてないけど、手はかけたんだからね。
それは言わなくてもわかったようで、早速食べ始める。
「うん。まあ普通にうまいですね。」
「まあ、誰でも作れますからね。」
そう言って笑いあった。
そしたら、明王ちゃんがマッサージでもしてやるなんて言うもんだから今日はどうしちゃったのかしら。
お言葉に甘えると、マッサージうまくて、こいつ本当に見かけによらず器用だなって思わされる。
でも、気持ちいいけど、くすぐったいしだんだん変な気持ちになってくる。
うわあ恥ずかしい。淫乱とか言われちゃうやばいね。
なんかそう思ったら本当に恥ずかしくなってきたので、「代わる」とだけ言って起き上がる。
ああ、そう?言って明王はなんの疑いもなく寝ころんだ。
明王程じゃないけど私だって女だもの、マッサージうまくなくちゃね!
しばらくやってやるとまんざらでもない様子。
かわいいなと思ってキスを落とすとなんかじっと見られた。何、私変なことしただろうか
思った瞬間にはベッドに沈んでいた。
そしてそのまま情事へ。


昨日喧嘩してしてなかった分今日は長くてハードでした。
布団のなかで昨日の喧嘩について話した。
「昨日何で喧嘩してたんだっけ?」「…忘れた。」
明王はもう眠たそうな表情で言った。受身の私の方が疲れてるのに!
でも、なんだかおかしくなった。
「喧嘩して仲直りできる幸せってやつですね」笑って言うと「何ソレきも。」
そんな会話のなか、今日も日付が変わる。
明日も晴れるだろうか。

prev next


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -