「ただいま」
今日も少し頭に雪をつけて帰宅。
時刻は6時。
雪国に生まれ育ったけど、やっぱりこの寒さには適わない。
居間につくとこたつで頬杖をついて目を瞑っている彼女。僕もコタツに入って彼女の顔を覗き見た。寝ているようだ。
彼女も仕事で疲れているんだろう。
すると、ぱちっと急に彼女の目が開いた。
「ただいま。」
「おかえり…。寝てたわ」
目をこすりながら立ち上がる彼女。
夕飯を作り出すみたいだ。
僕はテレビをつけてニュースを見る。今の時間じゃニュースくらいしかやっていない。
こうして帰宅してニュースをぼーっと見ているとなんだか老けたような気がして一人笑った。
しばらくすれば彼女が作った料理が食卓に並ぶ。
「いただきます。」二人揃って言えばすぐに食事が始まる。
「今日ね、新しい子が来たの。」
彼女は保育士の仕事をしている。微笑んで言う彼女は本当に子供が好きなんだと思う。
「何歳の子?」「2歳。めっちゃ小さい可愛い。」
「なまえらしいよ。」
言えば彼女はふっと笑った。
そんな会話の中ニュースが終わり、バラエティー番組が始まる。
もう7時か。そう思いながらサラダを口に運ぶ。
もう一日一日が過ぎるのが早くて、怖くさえ思う。
すぐにおじいちゃんになっていそうで。そしたら
そしたら目の前にいるなまえもおばあちゃんになってて。
そうだ。その時の自分は誰と一緒にいるだろうか。
誰と結婚しているのだろうか。
子供はいるのだろうか。
孫は見られるだろうか。

今目の前にいるなまえを見つめた。
テレビを見て笑ってるなまえを見た。
考え方は昔からちゃんとしていたし。
可愛いし、別に料理もおいしいし、仕事してるし、
たまにわがままだし理不尽だし短気だったりするけど。するけど、
ああもう自分は彼女が大好きなんだと実感したら何だか食事どころではないというか。

食事が終わると彼女はすぐに片付けを始めた。
「士郎お風呂入っちゃって。」
「わかった」言って僕はさっさとお風呂場へ。
そういえば彼女とは中学生時代からの付き合いかと服を脱ぎながら思う。
髪を洗って身体を洗ってあったかい湯船に浸かる。
付き合い始めたのは高校二年生の時だった。
今思えば初々しかったなあとまた一人笑った。

「……。」
ぽちゃん。
結婚かあ。もう同棲して長いし、ずっと付き合ってきたし、たぶんあんまり変わらないんだろうなあと思う。
大して喧嘩しないし、別にお互いの嫌なところとか知ってるし今更って感じ。

またぽちゃん。と湯船に雫が落ちる音が浴室に響く。
結婚かあ。またその言葉が脳内に響き渡る。
子供作ったり、たまに夫婦喧嘩したり、おじいちゃんおばあちゃんになって孫を見て。
その隣にいるのがなまえならば僕の未来はきっと今と何も変わらない。
変わったとしても、悪い方へ行く気がしない。

なまえと一生を共にしたい。
てゆうかなまえ以外考えられないし、なまえ以外じゃ逆にうまく行く気が全くしない。
あぁ、結婚かあ。


僕はさっさとお風呂を出ることにした。
今日急に考えるようになったなまえとの結婚という言葉。
今まであまり考えたことはなかったかもしれない。
だけどなまえはきっと考えていてくれたはずだ。

僕はお風呂から出て歯磨きしてから居間に行くとなんだか急に緊張してきた。
なまえは僕を見ると、じゃあ私もお風呂入ろうと立ち上がる。
僕は冷蔵庫からお茶を取り出してコップに注ぎそれを飲む。冷たいお茶が身体に伝うのがわかる。
僕は消えていたテレビをつけてぼーっと見ていた。
なんだか今日のテレビはいまいち。つまらなくはないけどいまいち。とりあえずつけておけばいいやとまたお茶を飲む。

そんななか僕はコタツの暖かさに心地よくなっていつの間にか寝てしまっていた。



夢を見た。

ぼんやりとした風景で、なまえ?らしき人物が子供を抱きかかえて笑っている。

子供はどことなく誰かに似ている。誰だろう。
自分の意識もぼんやりしていて、自分の存在もなんとなくわからない。

なまえらしき人物が子供に何か話しかけている。何を話しているのかはよく聞こえない。
だけどその中の一つの単語だけが耳に入り込んだ。


パパ。


その言葉は自然と自分のことを言ってるんだと思った。

その時に夢は覚めて、眠りからも覚めていた。



目には暖かい涙が溜まっていて、胸がぎゅうってなった。

なんだかすごく幸せに感じた。
それだけですごく幸せに感じた。


僕はコタツに突っ伏していた頭を上げると、目の前にはテレビを見ていたなまえ。

なまえは僕に気づくと、お茶どうぞと暖かいお茶を淹れてくれた。
ありがとう。受け取って飲む。
あったかい。


しばらくなまえはテレビを見入って、飽きるとテレビを消した。
そしてなまえは僕の隣にきた。そしてなまえから抱きついてきた。
僕はそれに答えるようにきすする。
流れるように床になまえの身体をまかせる。
何度もしてきたきすだけど、なまえとのきすは気持ち良くて幸せになる。
最後にちゅっと唇を軽く吸って唇をほんの少し離す。
お互いの頬を撫で合ってしばらく見つめ合う。

もう今しかない。

「「あのね」」
お互いの声が重なった。そしてすぐに何?という声も重なった。
そして二人で笑った。でも僕はすぐに真剣な顔付きになって、
「先に僕から言ってもいいかい?」
言うと、僕の緊張が伝わったのかなまえも緊張した面もちになってうんと頷いた。

僕は騒ぐ気持ちを落ち着かせるように一度深呼吸して

「僕と結婚してくれないか。」
声が少し震えた。
なまえを見つめてると固まったままだんだん目に涙が出てきて面白かった。
僕もなんだかまた胸がぎゅうってなった。なまえは泣いて泣いて泣いてから
「ずっと…待ってた。」
僕がなまえを抱きしめるとなまえも頬にきすしてくれた。
「あなたと結婚します。」
なまえは嬉しそうに笑ってくれた。すきすきだいすきなんて言うから僕はもうその気になってしまってむさぼるみたいにきすする僕になまえはちょっとと少し怒った。
「ご、ごめん。」
「私の話も聞いてよね。」
と、自分の結婚話ですっかり忘れていた。何?と聞くと、なまえはさらりと


「赤ちゃんができました。」

今度はさっきと真逆で僕が涙をこぼした。僕の涙がぽたぽたとなまえの白い頬に落ちていく。でもなまえは僕の涙を受け止めて、僕の目元を優しく拭う。
「パパですね。」
となまえは楽しそうに笑った。

すきすきだいすきなんて今度は僕が言う。

幸せってこんなにあったかいよ。

彼女は嬉しそうに

「これからもよろしくね。」
幸せそうに微笑んだ。

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