ギャップ萌え。というのが最近流行ってますよね。
たとえば、いつもツンケしてる男の子がふたりきりになるとなんかはにかんじゃったり。
たとえば、普段へたれな彼がいざというときは勝負にでるとか。

そういうギャップ萌えは大半の女の子も男の子も大好きである。
そんな私も最近その罠にかかっております。
その相手は倉間典人という背の低い男の子。ちなみに同学年である。おまけに同じ部活である。
だけど、今まであまり話をしたことがないのです。
だけども好きになっちゃったのです。どうしましょうか。どうしようもしないのだけれど。
誰だって恋すればこの恋を成就させたいと思うものなのだけど、話もしたことない奴からいきなりアプローチされても倉間みたいなタイプじゃたぶん引くだろうなと思って。
そんな接触の少ない倉間に何故恋してしまったのかというと、
彼は比較的背の低い男の子。私の方が若干大きいという有様。
彼はきっと自分でもそれについてコンプレックスを持っているんだろうけど。
そんな彼と私の部活はサッカー部。
彼のサッカーでの活躍はそれをものともしない。

それだけではなく、一年の天馬が来てからも彼は雰囲気も柔らかくなって若干私の中ではさわやかさまで感じる時まである。
マネージャー続けてて良かったと思った。そして天馬にも感謝した。


そんな今日も彼の背中だけを見つめて過ごす。
ドリンクすら渡せないまま視線も合わないまま今日も過ぎる。
でもそれだけで幸せなのです。

いつも通り今日も部活が終わり、メンバーが帰ってもマネージャーの仕事はまだまだ終わらない。
掃除洗濯明日の準備。雑用の仕事がマネージャーの仕事だけど家で何もしないより楽しいと思う。

やっと仕事も終わり学校を出たのが六時くらい。
もうじきに春だけど、やはり温かいのは日中だけだなと思い知らされる。

マネージャーみんなでいつものように話をしながら帰り道。そしていつものところで分かれ道。
一人で歩く時間はそう長くはない。みんなと別れて10分くらい歩いたらうちにつくのだ。
その途中にコンビニがある。
一度家に帰って財布を取ってそのコンビニに立ち寄る。
今日はちょっとしたお菓子に、にくまんでも買おうかとまず最初にお菓子コーナー。
チョコと、あとジャ○ビーでも買おうかと方向転換した瞬間、

「…あ」
聞きなれた声に誰かと理解する前に心臓が跳ねた。
「倉間」
うわあ倉間がいるヤバイ可愛いよ。
「どうしたの」
倉間が聞いてくる。いや、倉間がどうしたのと返すと
「ああ、なんか友達に呼び出されてちょっと話した帰り。」
「まじか」
倉間友達いたっけなと思ったけど、まあいるか。
「なまえは?」
先に目的のジャ○ビーを手に取る倉間。
てか、倉間私の事普通に名前呼びしてたんだ。やばいめっちゃ嬉しい。
「てか私の家この近くなんだよね」
結構普通気に話してるけど今心臓バクバクで声震えないか心配。
いまのところ大丈夫だと思いたい。
「まじか。この辺なんだ。」
倉間が私を見上げる。
うん、と言い私もジャ○ビーを手に取った。
「てか、今日もしかして今帰ってきたみたいな感じ?」
「マネージャーの仕事っていつもこんな感じだよ。」
へえ、と倉間の黒い瞳が私を見る。かわいいかっこいい、嬉しい。
「お疲れ様っす。」
と、ぺこっと会釈された。
「いえいえ」
とこちらもなんとなく会釈し返すとなんでだよって笑われた。
倉間の笑顔が私に向いてるとか今日寝れない決定です。
「他買うもんある?」
聞かれ、ううんと答えると、倉間は私の持っていたチョコとジャ○ビーを私から奪う。
「な、何をする!?」
聞いてるうちに倉間はレジに向かってしまった。
もしや…いや、もしそうならイケメンすぎる。
あ、そういえば私肉まん買う予定だったんだ。

私も開いてるほうのレジに行き、肉まんをふたつ買った。
先に会計を済ませていた倉間が外で待っていた。
「何、肉まんも食うのかよ、しかも二つ…」
倉間はまた八重歯を見せながら笑った。
「ほら」
と、先ほど私の買うつもりだったお菓子を差し出される。
「…ありがとう」
惚れてまうやろ…いや、もう惚れてるんだろうけど、重ねて惚れてまうやろ…!
私も肉まんを一つとりだして倉間に差し出すと
「…は?俺に?」
という倉間。それ以外何があるというのだ。
「さんきゅ」
言って倉間はまた笑った。
なんていうか倉間ってこんなさわやかボーイだっただろうか?
いや、普段の倉間なんかドヤ顔ばっかなのに。
なんか、いや、そのドヤ顔にすらさわやかさを感じていた私だったけど、知らなかった倉間が今日一日で見えてきて混乱すら覚える。
「で、なんか今までなまえと話したことホントあんまなかったなあと思って」
それ故気まずいとかはないのだろうかと心配になった。
本当に必要最低限の言葉しか交わさなかった。
ていうか、肉まん渡した時点で帰っちゃうのかと思った。
けど、話は続くし、倉間なんか肉まん食べ始めるし。
嬉しいけど、緊張はむしろ増していくばかり。
さっきまでの小腹の空きは感じられない。

私の緊張、あなたに届いてますか?
なんてな。

「いや、倉間女の子と話すとかつまんないかなと思って」
それだけじゃないんけど、本当にそれで近寄って行けなかった。
それを言うと倉間はうーんと唸る。
「うん。あんま女子とか好かんわ」
「でしょ。」
女子であったことを後悔すら覚えたことに流石に自分おかしいと思って訂正した。
「でも、なまえだったら別に気にしねえかも」
一瞬の沈黙。
コンビニの電気の逆光で、ただでさえ黒い肌の倉間の顔があまり見れない。
いや、それは逆に私の助けになっていた。
逆を言えば今の私の顔色は倉間にはばっちり見えている。ちょっとずるい。
「じゃあさ」
私は倉間に言ってみた。顔が熱いのは察して。


いや、やっぱり察しないで。
「これから話しかけてもいいの?」
聞くと倉間は、
「お前だけな」
と笑った。

これは期待しても良いのでしょうか?
可愛さとかかっこよさとか優しさとか紳士さとかさわやかさとか
みんなが知らない倉間もこのなかにあるとするなら、もっと知って
私のギャップも知って
今の私と同じ気持ちになって欲しいって思ったのは
ギャップを知った分何回も惚れ直したから。
また明日から私の中の世界が変わっていくんだ。
倉間の中の世界も変わってくれたら嬉しいなと思った。

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