私は雷門中学校サッカー部のマネージャーをしている。
結構前からやっていたし、部活のメンバーとは基本的にコミュニケーションをとっている。
結構このサッカー部では頼りにされていると思っている自分では。
だけど、イナズマジャパン結成後私は1人だけうまくコミュニケーションを取れない子がいた。

「何見てんだよ。」
不動明王だ。何にしたって彼は私をいや、私たちと親密にはなろうとしない。だから、私も彼が求めること以上はしない。
私も嫌と言われたら別に深くは足を踏み入れない。
私も人とは関わるのは好きだけど許せない自分の中にあるテリトリーを一歩でも踏み入られれば私だってあまり良い気持ちはしない。
彼はその範囲が広いだけなんだと思ったから。嫌いでもなければ別に好きでもない。
ただのサッカーチームの1人だ。
今日も私と彼は目を合わすこともなく1日を終える。

と思っていた。

今日の夕飯の買い出しは私1人になった。時間は6時。ついさっきまで練習をしていたから今日の夕飯はいつもより遅くなってしまいそうだ。他のマネージャーはまだ後片付けや掃除をしているので私はすぐさま合宿所をでた。
休み休み走ってやっとついて、食材をぽんぽんカゴに入れていく。マネージャーをやる前は買い物をするときもどこになにがあるのかすぐにわからなくて時間もかかったし、料理だって全然できなかったが、今はマネージャーの仕事のおかげで色々なことを覚えられた。
スーパーを出たのは六時半過ぎ。結構暗くなってきた。早く帰らないと。そう思い私は重くなった買い物袋を両手に下げた。
今日は1人なのでさすがにきつい。袋は4つ。その上一つ一つ重くてまだスーパーを出たばかりだがすでに気が滅入る。
誰か1人だけでいいから来てくれないかなあ、と私は肩を落とした。

合宿所は辺鄙な場所にあるからこういうときは本当に困る。
そして一番の難関は長い階段。
行きはよいよい帰りは怖い。
私はため息をつく。もう紫色になって冷たい指先をみて、一度袋を置いてぱっぱと血の巡りをよくし、固まった指をほぐした。
よし、といって階段を上る。
いつもより長く、そしていつもより急に感じる斜面。
汗をひたいににじませやっと登るだろうかというところで、前から高校生四、五人が下りてこようとするのがみえる。
柄の悪そうな男集団だった。
この階段は人が2人ギリギリすれ違えるほどで、その上荷物の多い私は何となく嫌な予感がした。

私は彼らが階段を使う前に登りきろうと考えて駆け足で登った。私に対してかわからないけど彼らが嫌に笑ったような気がした。
そして階段を登りきり、すれちがう時
「あ"っ!」
わざとらしい声がしてからどんとぶつかる。
その瞬間、何かが落ちる音とドボッと水が流れる音。
見るとパックのジュースがそこに落ちていた。
「ごめんなさいっ…」別に悪くないけど謝った一応。てゆーかぶつかってきたの向こうだしたぶんわざとだ。
「ちょっとちょっとー」
とこれまたわざとらしく笑う彼ら。私は恐怖よりもまず腹が立った。だけど、
「ジュースこぼれちゃったじゃないの、まだ一口しか飲んでないよ」
と私の肩にとんっと軽く乗せられた手にぞわっと全身に鳥肌がたつ。先ほどまでにじんできていた汗が私の身体を冷やした。
「さっき走ってたよね、僕らのこと怖いの?」
とまた違う男が触れようとしたとき

「誰だって引くだろそりゃ」
と、聞き覚えのある声が、
したとたん強く腕を引っ張られた。
それが先ほどと違って寒気とか全然しなくて、それでそれで


夢中になって少し走ったところで立ち止まる。
私は息を切らしながら後ろを振り返り追ってきてないかを確認する彼を見た。
「あ、ありがとう…」
まだ捕まれている二の腕にはまだ力が入っていてちょっと痛い。
「はあ」
彼、不動君は眉間にしわを寄せながら深いため息をついた。
「大丈夫かよ」
と彼の気づかいに内心驚きながら大丈夫だよと答える。
「それにしてもよく買い物袋落とさなかったな」
と、私を見た。私も未だに握りしめている買い物袋をみて苦笑いした。すると彼は

「執念かよ」
と笑っ…。

笑った…?
「笑った」
と思わず口に出すと不動君は、あ?とがんとばしてくる。
ごめんなさいと言うが、私は恐る恐る彼に言った。
「不動君、」なんだよ。言う彼に
「腕、血止まります。」
と、腕まで紫色になりかかってることを言うと彼は慌てて離した。すっと血の巡りがよくなった。
彼は無言で買い物袋を私から3つ取り上げる。「重いよ?」言うと彼は馬鹿にしてんの?ってまた眉間にしわをよせた。
でもなんだか怖くなくて、
「重…」
つぶやいた彼が可愛くて私はふっと笑って、重たいものを持たせてあげた。
と、なんだか指の感覚がぎすぎすする。
不動君は「ぐーぱーしてみ」と言うので袋を置いてぐーぱーしようとしたが、
「動かないっ」どうしようと慌ててるとまた不動君はまた笑った。なんとなくそれが嬉しい。
やっと動いた指をぐーぱーしてほぐすと不動君は袋を置いて
「両手の指同士を握るようにして、これを思いっきり引っ張りあいながら30秒待って話すとまた指動かなくなるんだぜ。」
楽しそうに話す不動君。そうなんだ!と私が表情を輝かせると不動君ははっとしてちょっと赤くなった。
「てゆーかぐーぱーしてみろって可愛いね」
笑うとうるせー。言われてそっぽ向いた不動君の後頭部を見てると
「あ"っ!」いきなり大声出す私にびくっと肩をちょっと跳ねさせた不動君にまたきゅんときたけど
「もう真っ暗じゃん早く帰らないと!」と私は不動に持たせていた3つの袋の一つをもって不動君を急かす。
「おい、」「不動君には2つで丁度良いよ」
と笑ったら不動君はまたちょっとむくれておまけにちょっとほっぺが赤かった。



今まで目も合わせなかった彼だったけど、
私は彼の深みにハマっていきそうだ。


不動君が私のマイブーム。

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