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「うん。とりあえず一週間は入院って言われた。...うん、荷物お願い。じゃあ先に病室で待ってる。」
かしゃんと
公衆電話の受話器を戻す。

今日右足骨折で入院になってしまった。
慣れない松葉杖2本を使ってやっと自分の個室に来れた。

「個室...ちょっとやだな」
つまんないしと、ばふんとベッドに腰掛ける。
「あったたたたぁ〜〜!!」

つい勢いよく座ってしまったため、骨折部分に響く。

名前は窓から見える青い空を見てはぁとため息をつく。


つまらないから松葉杖に慣らすがてら散歩にでも行こうかと廊下に出た。
すると、となりの部屋からリーゼントのゴツイ男の人たちが出ていくのが見えた。

学ランだったから高校生あたりかなと考えていながらそこの病室のドアの隙間から中学生か高校生くらいの男の子の姿。
名前と同じ”個室”ではあるが、なんだかすごく広かった。

ベッドでスヤスヤと気持ち良さそうに寝ている彼。


長い間いるのかな?そう思ってぼうっと歩いていると、

グギッ

「ぅわ!?」
慣れない松葉杖で躓いて転んでしまった。

「い”いだい〜〜〜」

誰か助けろ〜なんて足掻いていると、

「うるさいよ」

眠たそうにこちらに来た男の子。
目の前の病室の子だった。
あたしは骨折した方の脚もぶつけてしまい、必死になって彼に助けを求めた。

「ねぇ、ごめんちょっと...助けて」

手を伸ばすと、彼はめんどくさそうに名前の伸ばした手を引っ張った。

そして手際よく松葉杖も拾ってくれて、でもすぐに欠伸をして病室に戻って行ってしまった。

今度はもうドアも閉め切られてしまい、彼の顔は見られなかった。

















次の日友達がお見舞いに来てくれた。
午後2時までしゃべって、帰って行った。
騒いでしまっていたから個室でよかったかも知れない。そう思いながら、ふと昨日の隣の彼を思い出した。

そして目にとまった友達がくれたフルーツの盛り合わせ。

つまんないし、昨日のお返しという口実を立ててお邪魔することにした。



カラカラカラ...

「こんにちわ...」
入るけど誰もいない。

すると
「何してるの」
と後ろから冷たい声。
ギクッと肩を跳ねさせて振り返る名前をみて彼が眉間に皺を刻む。


「何。邪魔。」

と、小生意気なことを言う。
むっとしてイラつきも感じたけど、せっかく持ってきたフルーツ持って帰るのもなんだし、彼に差し出す。

「これ、昨日ありがとうね」

そういって差し出す名前に彼はまた眉間にしわを寄せた。

「もしかして君隣の病室かい?」

「え?うん」

そう言うと黒いオーラをまとい始める男の子。

「病院なんだからもっと静かにするべきなんじゃないの」
「え...?あ、もしかしてうるさかった?ごめ...!」

「邪魔」

またそう言って今度はベッドに入って眠る彼。

むかつくやつだけど、こっちも悪いことしたな。と思い、自分の病室に戻り、リンゴとナシの皮をむいて、あとすぐに食べられるミカンなども添えてこっそり彼の部屋に置いて行った。









夜、ジュースでも買いに行こうと出歩きに行った。
そして戻ってくると、彼の病室にフルーツを乗せて置いてきた皿がデーブルの上に置いてあった。





















次の朝、彼の病室に訪れた時、もう彼のいた病室は片づけられていて、あとで看護婦さんに聞いたら、なんだか怯えた顔で彼は風邪で数日入院していたらしい。

風邪で入院なんてあるのかなんて考えながらもなぜか寂しく思う自分がいた。




当然彼は退院。

もう会うことはなかった。





























ハズだった。


あたしの骨折がが思ったより治りが遅く、あと1週間は入院することになってしまった。

あたしはなんか元気が出なくてやる気も出なくて屋上に気分転換に来ていた。



ぼーっと夕陽をながめていると、

「ピピッ」
黄色い小さくて可愛い鳥が来た。

「なにこれかわいい」

瞬間、



「鳥だよ」

冷たく言うその声に少しだけ聞きおぼえがあった。
ふりむくとそこにはあの男の子。
なんでかこの生意気な彼と話がしたくなって言った。
「また風邪?」

そう言うと彼は
「鳥が少し元気がなくてね」

そういう彼に言葉を返す。

「ここは動物も専門なの?」
と、笑いながら言うとそうだよと彼。

当のこの黄色い鳥は毛ヅヤもよく、ぴんぴんしている。


でもあたしはこの鳥と骨折に感謝しながら言った。

「早く治るといいね。」


退院まであと少し。

なんでかあたしの心はもう元気だった。















「あの人今日は来ないのかな」
今日は最後のリハビリを終えたらもう退院の日だった。

時刻は4時。
お母さんの迎えの車があと少しでこの病院に着く。


でも、まだ来てほしくなかった。

あの人に会いたい。



でも、見えない。

あのガクラン。
あの髪型。
あの仏頂面。

あたしは何待ってんだと苦笑しながら俯いた。


馬鹿だなあたし。






すると



ふわ...


頭の上に軽い柔らかい感触。
「あ...!!」

黄色い鳥。


振り返るとそこには”彼”。


そしてここではじめて言った。

「あたし...名字名前」

言うと彼はまた仏頂面のまま。

「そう」

そう静かに言う彼にあたしは言う。

「君の名前...知りたいんだけど」

そういうと、彼はあたしのところまで来て

耳元で





「雲雀恭弥」

そう囁いた。

そして確信して”ヒバリ”に言った。








「    」
(好きかも)



いや、


好きだよ

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