ちいさなむくろ [ 5/5 ]

ある雨の降る日。

名前は傘をもってきていなかったため、公園のベンチで雨宿りをしていた。

「あーあ。もっと早くから降ってたらコンビニで傘買ってたのに」
と、鞄のなかに入れてあったコンビニ袋を出す。


そしてコンビニで買ってきたお菓子を食べていた。


すると、


ひょこっと現れた男の子。

藍色の髪の毛、紅と蒼のオッドアイ。

それに黄色いアヒル柄の傘に黄色いかっぱ。

名前はつい声をかけた。


「ぼく、お母さんは?」
そう聞くが、男の子は人見知りするタイプなのか、もじもじしながらただ名前をちらちら見た。

名前は食べていたお菓子をひょいと男の子に差し出し。

「一緒に食べる?」
と聞く。
男の子はこくっと頷いて名前の隣にちょこんと座った。

そして名前からお菓子をもらうともぐもぐ食べだした。

名前は子供が好きではなかったが、可愛いしぐさの男の子にきゅんきゅんと胸をうたれた。


「ねぇ、ぼくおなまえは?」

男の子はしばらくぼーっと考えていたが、

「ろくどう、むくろ」
あどけない声で名前に耳打ちして言った。

何故耳打ちしたのか疑問に思ったが、名前はもうすっかり゙むくろ゙にメロメロだった。

「むくろくんは、」
質問しようとしたが、むくろが不服そうな顔をする。

「むくろってよんでください。」
そう言ったむくろに名前はどきっとしてしまう。


やばいなそろそろ対象年齢さがってくる程欲求不満なのかしらほほほなんて考えながら、

「じゃあむくろ。」

そう呼ぶとむくろは歯をみせて満面の笑みを見せてくれた。

「むくろは、お散歩にきてたの?」

そう聞くと、
「まぁそんなところです。」

と、おませな言葉遣い。
そんなところも可愛いなと思いながらしばらく一緒にお菓子を食べていた。


すると、今度はむくろの方から、

「おねぇさんはどこに住んでるんですか?」

そう聞かれて、名前は「すぐそこの駅わかる?」
「はい」
「あの駅から自転車で15分かかるところからきてるの。」
そう言うとむくろは
「きょうは自転車ないんですか?」
そう聞くむくろに
「あいにく自転車がパンクしちゃってきょうは歩いて来たの。」

そう言った名前にむくろは傘ないんですか?と聞いて名前はうなずく。
すると、骸はぴょんっとベンチからおりて、傘を取って名前に差し出す。
「ぼくの傘かしてあげます。」
そう言った、骸。
だけど、お姉さんの名前が受け取るわけにいかない。
「大丈夫だよ。むくろがかぜひいちゃうよ」
そう言うとむくろは泣きそうな顔になる。

「ああ、ごめんねごめんね!でもお姉ちゃん雨が弱くなったら走って帰るからいいんだよ?」

そう言うがむくろは頑固なのかむすっとしたままずっと名前に傘をつき出している。

名前はとりあえず話題を反らした。

「じゃああと30分待ってみよう!それから決めよ!ね?」
そう言う名前にむくろはむっとしながらも赤くなってしょうがないですね、と傘を置いてベンチにまたちょこんと座った。


すると、むくろの方から質問が
「おねえさんは彼氏さんはいるんですか?」
と、またおませな質問。
残念ながら、
「独り身です…」
と、力を抜かした。

名前は話題をそらしてむくろの年齢を聞いた。

「むくろはさ、いくつなの?」

すると、むくろは

「ぼくは、じゅう…まちがえました、5さいです。」
何故「じゅう」なんて言葉が間違って出てくるの可愛いなんて考えながら、そうなのーと頭を撫でてやった。


すると、雨が弱まってきたのに気付いた名前。


「あ、雨が弱くなってきた。じゃあむくろ、私帰るけど、むくろはひとりで帰れる?」

そう聞くと、むくろは慌てて傘を取り出した。「おねえさんこれ使ってください」
そう言うむくろ。

もうしょうがない子供だなぁと困る名前。

「おねえちゃんはむくろより体が大きいからかぜひいても治っちゃうけど、むくろがかぜひいたら大変なんだよ?だから傘はむくろが使いなさい。」

そう言うが、むくろは

「明日また返しにきてください!」
そう言う。
「ぼくはここからあるいてごふんくらいにおうちがあります。おねえさんがつかってください!」

そう言うむくろに名前は諦めて

「わかった。」
そう言って、名前には小さい傘を受け取る。

そして優しいむくろの頭を撫でてあげた。


「じゃあ途中まで一緒に行こうか」
と、よっこいせと名前はむくろをだっこする。

すると、むくろは照れているのか真っ赤になる。

だけど、公園を出てしばらく歩いたところでむくろが
「おろしてください」
と、言った。

「おうちこの近くなの?」
と、聞くとむくろははいそうです。

名前は
「じゃあお姉ちゃん送っていってあげるよ」
と言うが、むくろは首をよこにふった。

「どうして?」

「おかあさんに叱られます」
そう言うと、むくろはとっとこ走っていく。

「ねぇ、あした公園でねー」
と叫ぶと、むくろは大きく手を振った。
そして再び走っていってしまったむくろ。
名前はむくろが走っていった方をみて微笑んだ。そして、ひよこ柄の小さな傘をみてくすりと笑った。

「こんな傘じゃ恥ずかしいかな」

なんて言って歩き出す。

すると、再び大降りになってきた雨。

むくろは大丈夫かなと思ったが、雨に降られていないことを願った。


そしてせっかく貸してもらった傘だけど、ちいさくて鞄や肩は濡れるかなと思って再び傘を見た。










「あれ?」










雨に濡れない鞄と肩。







名前には小さかった傘は名前にぴったりのサイズになっていた。



変わらないのはひよこ柄だけ。









名前はもう一度むくろが去っていった方向を振り向いた。

だけど、もちろんむくろはいない。







不思議な感覚のまま名前は遠い家まで帰っていった。



















翌日、学校が終わって名前はまっさきに借りた傘片手に駅から公園に向かった。


だけど、ベンチに行ってもむくろどころか誰もいない。


まだ来てないのかななんて思った瞬間、









「゙おねえさん゙」

聞きなれない声。

名前が振り向くと

「こんにちは」
誰かに酷く似た、中学生か高校生くらいの少年が。


藍色の髪、
紅と蒼のオッドアイ。












「むくろ…?」


少年は微笑み


「六道骸と言います。」










名前は不思議な出会いをした。
そして、すぐに恋をした不思議な物語。

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