56
家に帰ってくると、部屋は暗くて何だか寂しさを覚える。

人肌が恋しい、というやつか。

骸と同棲とか、と一瞬考えてみる。

「重いかな…」
と苦笑した。

一緒に居られたらいいのに、そう思ってベッドに身を埋めた。
またお腹が重くなってきた。
薬を飲もう。

そう薬箱を取り出して頭痛生理痛に効く薬を飲む。



そこで



「〜♪、♪♪〜」
着信音が鳴る。
電話だと理解し、無意識に骸だと思いディスプレイを確認せずに電話に出た。

すると


『…もしもし?』


父だ。

父の声が耳に入った。

「っ…!」

『出てくれるとは思わなかったよ。』

渚は眉間にシワをよせて、
「何の用?」
『まあ、急な話になるが…』

父は一度間を起き





『今月いっぱいでお前のアパートを引き払うことになった。』
渚はその言葉の意味を数秒経ってから理解した。

「何それ…?何よそれ!」

『…はあ…お前言ったよな?大学進学したら帰ってくるって。』
「……。」
確かに言った。
『引っ越す準備をしておけ。』
そう言う父は、渚が何も言わないと、困ったようにまたため息をつき、
またなと短く言って電話を切った。





しばらく放心状態の渚。



おばあちゃんと過ごしたこのアパート。

吉徳と過ごしたこのアパート。


骸と過ごしたこのアパート。



この部屋をついに離れる時がきた。




渚はこうなれば拒否できない。
自分でアパート代を払ってるわけでもないんだから。


渚はまだ実感のわかないまま、少し傷もできてる床を撫でた。



「あったかかった。」
ついに家に帰る時がきたんだ。

それは遅かれ早かれくることだった。
それが今きただけの話だ。




わかっている。

わかっているけど、




やっぱり寂しい。


















翌日。
教室に行くと篠木の姿を見つけるなり渚はかけて篠木のもとへ。
「よっ篠木おっは…」


を言おうとした瞬間、固まる渚。
それは

「あぁ、おはよう。」
篠木の頬に大きな絆創膏があったから。

「何?それ…」

すぐに思った。

「彼氏でしょ…?」
渚は篠木の手首をつかみ言う。
「まあね」
篠木はいつものようにニカッと笑った。

笑ったのに
全然楽しくない。

「…好きなの?」
聞くと篠木は
「…好き。好きだよ。…好き」
篠木は好き、とだけ言う。
でもそれは渚には、篠木が自分に言い聞かせてるように聞こえる。

自分がそうだったから。


「…うん。わかったよ。」
渚はただ微笑んでやった。
篠木はきっとこういうことに首をつっこまれるのは嫌だろうし、自分も何も知らないのにズケズケ入り込むのも嫌い。


篠木は自分でなんとかできるはずだ。



渚と篠木はすぐ気持ちを切り替えて、いつものように他愛ない話をはじめた。










この日授業が終わり、渚は篠木にどこか行こうと誘われた。
「暇。どっか行こ。ただし金かかんないとこ。」

そう言われても…と渚は一瞬考える。
















来た場所は保健室。
今日は鍵が開いていた。

渚はテレビをつけた。
時間じゃないためまだやっていない。
「何?テレビ見ていいの?」
篠木は面白そうに笑った。

そんな2人に
「おい。何勝手にテレビつけてんだ。」

後ろから聞こえた声。
「先生、よっ」
保健の先生。
渚をみて先生は、はあとため息をつく。
「またお前かよ?なんだダチまで連れてきて。」
「この子が暇だって言うから。」

篠木は先生をまじまじ見る。

「こんな若い先生いたっけ?」
「若くてイケメンだろ?」
言う先生に
「でさ、昨日みた韓国ドラマが超面白くてさ」
「韓国ドラマぁ?何主婦みたいなこと言ってんだよ。」

「おい。」

そんな3人は保健室でお茶を飲みながら韓国ドラマについて語り明かした。

話だけではまだつまらなさそうな篠木だったが、先生の話がちょうど終わったときに韓国ドラマがはじまり、

3人で韓国ドラマを見たら篠木もハマってしまった。

先生は篠木の顔の絆創膏について何も聞かず、篠木も先生といちとけた。

そして、授業が終わればこの保健室に集まるのが日課になるのだった。






















数日後もいつものように3人で盛り上がり、学校を出、篠木とも別れ道まで語りながら歩いた。

家に着く少し前で骸を見つけた。
「骸。」
駆け寄ると骸はいつものように微笑んでくれなかった。
でも不安になるとかはなかった。
渚と骸は横に並びアパートに向かう。


骸はムッとした表情で言う。

「遅かったですね。」
「ごめんね。韓国ドラマ見てて」
と苦笑いすると

「最近あんまり一緒にいれなくて、なんか…」
嫉妬だろうか?なんだかムッとした骸が可愛らしくて
嫉妬なら、嬉しくて。

ただ笑いかけると骸はほっとしたように、いつもみたいに微笑んでくれた。


でも、ふと思い出す。



伝えなければならないこと


「あのね…」
「あの…」
2人の声が重なった。



アパートに着き、渚は鍵を差し入れ回した。






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