54
三連休もあっというまに終わった。

今日は篠木は彼と用事があったようで先に帰ってしまい、骸はまだ授業がいくつか残っている上に飲み会にしつこく誘われたらしい。


ということで今日は久々に一人だ。

今は午後3時。
今日の授業は終わったし、一緒に帰る相手もいないからまっすぐ帰ろう。

と思ったが、今日はいわゆる"女の子の日"というやつで、体調がだいぶ悪い。

雨も午前中から降り始めていて今日は冷える。

体調は益々悪くなり、お腹は死ぬほど痛い。

教室でしばらく休んでから行こうと思ったが、今日はあいにくこのあとも授業で使うようだった。

歩くのさえ、立ち上がるのさえ億劫だ。

薬を飲んでくればよかったと思い、期待はしていないがポーチの中に薬が入ってたりしないかと探したが、生憎そんなものは常備していない。


と、ふとこんな時に頼るものと言えば

「保健室…」
渚はそれを思い浮かべると真っ先に保健室へ。

が、

保健室が空いていない。

渚ははあ、とため息をついていると
「何?保健室に用事?」
と女の先生が。
「あ、はい…。ちょっと生理で…」
と小声で伝えると先生はあらまあと言って保健室の鍵を開けてくれた。

「痛み強い?」
「はあ、かなり…。」
言うと先生は薬箱を探しながら困ったように笑った。

「先生も困ったものねえ。こんな時にいないなんて。」

たぶん保健の先生のことだ。
渚は苦笑いしながらそうですねと軽く返す。
そんな渚に先生は頭痛生理痛の薬を渡した。

「ありがとうございます。」
「つらいならしばらくここで休んでなさい。」
「あ、はい」
先生はそう言うと渚を残し保健室を出た。

ざわめきもない静まり返った部屋。
電気は一本しかつけていないため薄暗いが、なんだか落ち着く。

雨の音だけが心地よく響き続ける。


渚はもらった薬を含み、ペットボトルのお茶で流し込む。



すると、だんだん眠くなり、ふかふかのソファが近かったため、そこに座っていたら眠ってしまった。















渚は電気だろうか?光のまぶしさでふと目を覚ました。

「んん…」
まぶしさに目を固く瞑る渚に声がかかった。


「おい。寝るならベッド行け。」
「んー…」
渚はまだ寝ると言ったように声のような音のようなものを発した瞬間、

「!?」

バッと起き上がる。
「え…?」
今何時かと見れば時刻は4時過ぎ。
そんなに時間はたっていないようだった。

寝ぼけていたため、目の前がかすんでいたが、目をこすると見覚えのある顔が、斜め前のベッドで座ってこちらを見ていた。


「目覚めたか。」
そこにいるのは、あの時の保健の先生。

気づけば毛布もかけてある。

「なんかスイマセン。」
渚が言うと。
「俺のソファ取ったこと以外は許してやるよ。」
先生の言葉に渚は、むしろそれ以外になにか迷惑かけただろうかと首をひねる。

そんな渚に
「暖かいもんでも飲むか?腹痛ぇんだろ?」
渚はテーブルの上に置いたままの薬を見る。確かにそう言われたらまた痛くなってきた。

「何がいい。あー…コーヒーとハーブティーと緑茶。」
渚が考えているうちに
「じゃあハーブティーな。」
まだ何も言っていないのに、と渚は少しむっと先生を睨む。
そんな渚をよそに先生は暖かいハーブティーを差し出す。

「ありがとうございます。」
渚はありがたくハーブティーをいただくと

「おいしい。」
何だかほっとしてお腹に暖かいのが伝わってくるのがわかる。
「ハーブティーは生理痛緩和作用と体を暖める作用がある。」
先生はコーヒーを飲みながら言う。
「へえー。」
「らしい。」
と後付けされた言葉に苦笑いする渚。

先生は渚の向かいに椅子を持ってきて座る。

そして古いいかにも学校のテレビをぽちりとつける。

ドラマをやっている。

いや、ドラマだが何故か吹き替えがしてある。

と思ったらどうやら韓国ドラマらしい。
最近は若い子もハマっていると聞く。
先生はそれを一生懸命見はじめた。
面白いのだろうか?
渚はなんとなく興味をもち、一緒に韓国ドラマを見始めた。






一時間後。

「キャーッ!マジイケメンですねーっ」
渚もハマっていた。

もう終わってしまった。
一時間居座っていたらハーブティーも何杯かおかわりしていたこともあり生理痛も和らいだし体も暖まってきた。
「どうだ。面白いだろ?」
「面白い!明日からあたしも見ます!」
渚は目を輝かせて言った。
「でも今日のって何話だったんですか?」
「あ?みりゃわかるだろ。8話。」
なんと、8話なんて日本じゃもう最終章突入じゃないか。
「えぇー!じゃあもう少しであれ終わっちゃうんですか?」
「日本と一緒にするな。大体の外国ドラマは日本みたくすぐ終わんねーよ。」
「へー…」
そういうものだろうか?

それにしても

「1話から見たかったなあ…」
渚はがくんと肩を下ろすと。

「じゃあ俺が今までのあらすじ教えてやろうか?」
そう言う先生に渚は
「はい、是非!」と言った所で鐘が鳴る。

時間を見ると五時過ぎ。
「じゃあお前授業ない時間に適当に来い。さらっと説明してやるから。」
そう言う先生に渚ははい、と返事をして動けるうちに帰ろうとさっさと帰り支度をして保健室を出て行った。


|

[しおりを挟む]
[Back]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -