53
来た。


「遊園地…!」
久々だ。


今日、骸と渚は遊園地に来ていた。

目を輝かせる渚。
最後に来たのは小学生の頃。

「骸っ」
渚は骸の背中に声を投げる。
「?…あ」
骸は渚の持っている物をみて微笑んだ。

それはクリスマスに骸が渚にプレゼントしたデジカメ。
「いっぱい撮ろうね」


骸が頷くと渚はさっそく遊園地内地図へ。

まず2人は有名なアトラクションや、草食動物と触れ合うコーナーへ。

絶叫マシンや王道であるコーヒーカップ。


おばけ屋敷やトリックアートも回った。


ソフトクリームも食べたし、お土産も見て
ちょっとしたショーを見た。


遊び回っていたら、履き慣れない靴で靴擦れを起こしてしばらく噴水のベンチで2人で話した。


そのどれもが楽しくて、

あっという間に夕方を過ぎて日が落ちていく。

5月といえど日が落ちれば寒い時期。
自然とふたりの距離が縮まる。

最後に観覧車。
向かい合って座った。

渚はじっ、と夜景が広がる景色を眺めた。

「もう1日が終わっちゃうんだ」

言うと骸も少し寂しそうに微笑む。
「早かったですね。」
骸の言葉で渚は今日1日のことを思い出す。

「楽しかった。」
夜景の光が渚の瞳をも照らす。
「楽しかった。」
渚は目を閉じて再び同じ言葉を言った。
骸もはい、と微かに返事をした。

それからは特に会話もなくただお互い静かに時間を過ごした。


そしてついに観覧車を降りる。

心地良かった。


2人は手を繋いで遊園地を出た。


帰りの電車は、遊園地の景色のあとではなんとなくつまらない。

疲れがたまった2人は一般車両の混み具合をみて、グリーン車へ。

2人とも帰りの電車はずっと眠ったままだった。














そして、電車の時間までも短く
静かな帰り道を歩く。


「骸、今日はありがとう。」
「…いえ。」
何だか元気がない骸に渚はどうしたのかと尋ねると
「え…、いえ。なんだか予想以上に楽しかった時間が過ぎて行くのが切なくて…」
渚は骸のその言葉を聞き、
「あたしも…」
と苦笑いした。

「そう言えばちゃんとしたデートらしいデートって初めてだったね。」
「そうですね。」

「何かお互い寂しくなったけど…そんくらい楽しかったってことだよね?」
渚がふわりと笑うと骸も微笑んだ。

「また行きましょう。」
骸が言うと渚もうんと頷く。


写真もたくさん撮った。
この写真を渚が骸にプレゼントしたアルバムに残していく。


暖かくなった。



今日はぐっすり眠れそうだ。





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