52
骸と登校できる。
入学の日も一緒だったが今日ははじめから一緒に歩き出す。

嬉しいし楽しいしワクワクする。
足取りはまだ重いようで軽い。
まだまだうまくやっていける自信があるわけじゃない。


骸と話しながら歩いていればやはりすぐ学校につく。
一々名残惜しいことに自分が骸に依存してることが身にしみて苦笑いする。
そんな渚に

「おはよ」
後ろから声をかけられた。
「…っ!あ、えっと…」
渚は少し驚きながら振り向くと昨日の彼女。
名前がすぐにでてこない渚に彼女は少し拗ねたように笑った。
「し・の・き。」
「あ、そう篠木さん!おはよう」
渚に彼女、いや篠木は初めてにかっと笑った。
「教室一緒だろ?行こう」
先をはしゃぐように早歩きで行く篠木のあとを渚は追う。
何だか嬉しい。
友達なんてそんなに数多くない。
多くないのに親友はいない。
親友になれそうな子もいなかった。

何だろうこのワクワク感は。

子供のように笑った。
周りの目が恥ずかしいとか考えなしに。
彼女のあとに次いで走った。




「ねえ、あんた男いたんだね。」
お互い授業が二時間ほどなかったため二人で庭で話していた。
そんな時ふいに彼女がそんなことを言ってきた。
「え…なんで?」
別に隠したいわけじゃないが、ただ単になんでと返した。

「朝一緒に登校してたじゃん。似てないから兄妹でもないと思ったし。」
もしかしてただの友達?とジュースを飲みながら言う篠木。
「あ、うん。彼氏。」
少し照れる。
そんな渚に篠木が面白おかしげに言ってくる。
「なにちょっと照れてんのさ?」
篠木に渚は少し無神経だなとむっとしながらも頬を赤らめて
「と、…"友達"とこういう話すんの慣れてない…から」
眉間にシワをよせる渚に、しかしその言葉に篠木は一瞬ぽかんとする。
「友達…」
つぶやく篠木に渚は少し傷つきながらも
「ごめん、そんなつもりじゃなかったら…」
と謝った渚に
「べ、別に照れてないからウチは!」
バラしてる。
渚は何だか胸のあたりがあったまる感覚に少し戸惑う。
初々しすぎてまるで付き合いはじめた恋人同士だ。

「あ、ごめん話逸れたね。」
たははと笑いながら頭をポリポリかく篠木。

「し、篠木さんは…」
言いかける渚に篠木がむっとする。
「さん」
その一言に渚は一瞬首をかしげたが、

「し、篠木は」
言うとまたにかっとわらう篠木。
「篠木はいるの?」
篠木は一瞬目線を下げたが、それに渚は気にとめなかった。
「あー、ん…。いるよ。」

渚はへえーと笑いながら言ったがお互い恋の話はここでおしまいになった。

お互いそんな柄じゃないし、別にそんなに興味もない。
普通に他愛のない話をして笑った。


まだ出会ってそう経ってないのにお互い親友になった気になっていた。


その大きな存在のおかげで不安なことは一気になくなった。

あっという間に5月に入った。
やっとよく授業が重なる顔ぶれやら先生の顔を覚えてきた所だ。


篠木ともよく遊ぶようになったが、骸との時間が少し減ってきていた。


が、明日から三連休ということで今日から骸がうちに来てくれるそうだ。
渚は篠木と別れてすぐに家に帰った。

時間は午後5時。
骸がうちに来るのは久々だし何となく張り切って夕飯を作りたい気分だった。
せっかくなら良いものが良い。


夕飯ができるちょっと前に骸がきた。
骸は鍵を持っているのに一々インターホンを鳴らす。

一応礼儀なのだろうか。

親しき仲にも礼儀ありというが、そんなちっぽけな礼儀はいらないのに。

インターホンを鳴らしてからすぐに骸は鍵を差し入れて回し部屋の鍵を開ける。
なんだか変な感じだ。

と思っているすきに最後の料理が食卓に並ぶ。

「ただいま。」
骸が家にきたとき、この言葉を言ってくれるのが内心すごく嬉しい。

「おかえり。早かったね。」
渚はエプロンを脱いで手を洗い、座りながら言う。

おかえりという渚に骸はまずキスする。
「車走らせてもらいました。」
それから会話を続ける。

骸はテーブルに並ぶ料理を見て目を輝かせる。
「今日ははりきりましたね。」
「久々だしね。」
そう言う渚の横に骸も座り二人していただきます。

あと2日の休日は何して過ごそうか。
二人は声を弾ませて休日について語りながら夕飯を食べた。


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