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卒業式当日。
早めに校門で待っていると骸もすぐに来てくれた。
「骸おはよう」
骸はおはようございますと言ったと思うと少し寂しげに笑った。

「何、どうしたの?」
渚が聞くと骸は
「いえ…、渚の制服姿今日で最後なのかと思うと…」
と骸は渚を少し遠くから眺めるように見る。

「そっか…今日でこの制服最後なんだ…」
そう思うと一気に寂しくなる。

と、スカートの裾をつまんでいると
「私なんか最初で最後よ。」
と、待っていた声が。

「お母さん!」
渚は骸の横をかけて、声の主の元へ。

「久しぶりね渚。」
渚を嬉しそうに見る母。
骸は身だしなみを軽く整えて緊張の面持ちで渚の母の元へ。

「お、お久しぶりですおばさま。」
渚の母は骸を見て目を丸くする。

「やだ、…骸じゃない…」
数年ぶりに会って見違えるように成長した骸を見た。
「ど、どうしたのよ?渚と仲良いの?」
そう言う母に骸は渚の手を取って
「はい。僕、渚さんとお付き合いさせていただいてます。」
骸が少し照れながら言う。
渚も嬉しそうに笑う。


だが、
「え…?」
渚の母は笑ったまま顔を硬直させていた。
「い、今なんて…?」
「は、はい。僕は渚さんの恋人です」
とキッパリ言うと、母はあ、そうなの、と笑った。
渚は微かに眉を潜めて母を疑問に思った。


が、じきに卒業式も始まる。
渚は気持ちを切り替えて先に教室へと向かった。














胸に花をつけて証書を受け取る。
歌や答辞、そして周りのクラスメイトたちからのもらい泣きで、やはり色々な高校生活を思い出した。


色々なことがあった。



渚は無意識に離れているが、斜め前の席にいる吉徳を見た。


別れて以来一度だって口を聞いていない。
もちろん連絡さえしていない。


新しい彼女でも作ってくれていれば少しはこの罪悪感もなくなるだろうか?


吉徳との間にも色々なことがあって、
それに悩み苦しみ喘ぎ泣いた。

だからこそこんなにも骸を愛せている。



渚は骸を想い今度は出会えたことに対しての嬉しさで涙した。












渚は共に高校生活過ごしてきた友達と別れをつげると、校門で待っている骸と母の元へ行く途中。

玄関で靴を履き替えていると

「渚。」
呼び止められた。

その声を忘れかけていたが、ふいに思い出して一瞬心臓が跳ねた。

「吉徳。」
数ヶ月ぶりに話す吉徳の表情はやわらかく、接しやすかった。

「久しぶり。」
「毎日同じ学校にいるのにね。」
と言い合う。
「最後にお前の顔ちゃんと見れて良かった。」
吉徳ががしがしと頭を撫でる。
今ではこの力強い手も怖くない。
「あたしも。いつも背中ばっかだったから。」
渚の言葉に吉徳は、かっと笑う。
「俺のことそんなに目で追ってたのかよ」
「そりゃ元彼だもんね。」
と笑いあった。

「じゃあ、またいつか会ったら」
少し寂しげに手を振る。
「うん。見かけたら声かけてよね。」
そう言って渚も手を振った。




「「バイバイ」」
















「お待たせ」
と校門に行くとまあ骸が女子生徒の注目をあびてるあびてる。
骸と校門前で写真撮りたかったけど諦めよう。
とりあえず母とツーショット。


注目をあびる骸をひっぱってやっと学校から離れた。


「骸美形だからやっぱりすごかったわねえ」
母が笑いながら言う。
「たまに一緒にいるあたしが恥ずかしくなるよ」
「は、恥ずかしいことなんてないでしょう!」
そう3人で話していると

「じゃあ渚。私こっちだから。」
「あ…そっか、ここでお別れか」
少し寂しい。

「また近いうち会えるよ。」
笑う渚の母はやはり渚の母。
静かな微笑み方が似ている。


「じゃあまた…」
と手を振る母だったが


「あ、骸と渚。」
最後に母が振り向く。





「一応言っとくけど、結婚は許さないから。」
凛と言い放つと、改めて手を振って行ってしまった。


「な、んで…?」
春の風が冷たく2人の身体を冷やした。

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