02
昔父の知り合いの子の家族と一緒に二年ほど田舎に滞在していた。
3歳年上のとても優しくておちついたお兄さんで、
お互い兄弟のいないもの同士よく一緒に遊んだ。
実はちょっとした初恋だった。

その時は父母、そして母型のおばあちゃんも一緒に滞在していて、
渚もそのお兄さんもおばあちゃんが大好きだった。

よくおばあちゃんと渚とお兄さんで近くの公園に行ったり、川に遊びに行ったり、山に散歩に行った。


あの日に戻りたいと思い始めたのはいつからだろうか…?




祖母も好きだった紫色。
紫色のドレスをさらりとからく撫でるように手をすべらせた。



受付を済ませ会場内に入る。
とても綺麗な場所だ。
渚は差し出された席の番号を探す。

そこは父型の祖父と、祖母とそして父がいた。

2つ開いている席。
渚は祖母の隣に座った。
祖母は
「お久しぶりね渚ちゃん。」
「お久しぶりです。」
お洒落で綺麗で年の割には綺麗な"こちらの"祖母。
鈴鹿の中で渚によくしてくれる大人はこの人位だ。
でもやっぱり鈴鹿の人間はあまり好かないのかもしれない。
きっと"庶民"の方が渚にはしっくりくるのだ。

渚はふと父と目があう。
疲れたようなやつれたような顔。
声をかけてきたのは向こうからだった。
「…元気なのか?」
「…元気だよ」
久々の父の声。
大嫌いなわけじゃないが、嫌い。
少し見せる心配の色に苛立ちを感じる。

なんでこんな席なのだろうか…。


そう思っていると祖父が
「まだ戻ってくる気はないのか?」
たぶん一人暮らしのことを言ってるんだろう。
「はい。高校卒業までは続けようかと…」
そう言うと難しい顔をする祖父母と父。
世間体ばかり気にして…。
そう嫌気が指してるときに、

「あぁっ…!やぁ。久しぶりだね。さぁこちらに座りなさい。」
と、祖父が先ほどの難しい表情から笑顔を向ける。
祖母もさぁさぁと迎える。

見ると見覚えのあるような男の子。
格好いいというよりもう美男だった。

いつもはあまりドキドキしない渚だったがこの時は胸が騒いだ。
美男だのとかそういうのではなくて

「むく、ろ…君?」
"お兄さん"だ。

初恋のお兄さんだった。
数少ない恋の中で一番心に残っていた彼。

だけど、今の彼である吉徳を思い出し一気に気持ちを戻す。

「渚、お久しぶりです。」
「久しぶり…」
と握手を交わす。
六道骸。
父の親友の息子である。
彼もまた御曹司というやつで、渚の家と同じ程大きい会社を持っている。

骸はもう一つ開いていた席に座らされる。

何故この面子なのだろうか。

そんな疑問のまま式は始まった。








夜7時。
これから二次会に行こうとの話が出た。
渚はもう帰るつもりだったのでお姉さんに挨拶して会場を出た。

するとそこに六道骸。

「あ…」
何て言えばいいかわからず、渚は会釈をし、帰ろうとしたが
「渚」
呼び止められる。
「な、何でしょう…?」
振り向くと、骸はクフフと笑った。
「昔のように話してくれませんか?」
「えっと…何?」
笑われて照れを感じているのか顔に熱を感じながら渚は言い直した。

「二次会不参加ですよね?」
「うん…。人多いのやだし…空気的に…合わないかなって」
そう言う渚に骸は
「良かったら今から公園でお話しませんか?」
面倒に感じながらも、静かな場所で過ごすならとOKを出した。



しばらく歩くと少し広い公園につく。
ベンチに座るが、話題がない。

が、沈黙を破ったのは骸だった。
「渚は今高校三年生でしたね?」
「うん、そう。骸君は?」
「僕は大学生です。渚の3つ上なので今年21です。」
「あ、骸君てあたしの3歳年上だったんだっけ…」
そう言うと骸は
「骸でいいです。君なんて、…」
と、苦笑いして言った。
渚はじゃあ、と
「骸。でいい?」
ハイと答えた骸。








そして他愛ない話を続けていた時、
ふとワンピースの話を振られた。
「そのワンピースはいつ買われたんでしょうか?」
そう聞かれ、すっかり骸といちとけていた渚は笑って、







「これね、おばあちゃ…「僕がもっと良いものを差し上げます。」



ズキンと胸が冷たく鳴った。

「え…?」
「今度もしパーティーかなにかに誘われるようなら、僕とお買い物に行きましょう。」
渚は一気に気持ちが冷めていくのがわかった。
「骸…、おばあちゃん覚えてる?あたしの…」

骸は少し渚の顔を見つめたあと




「…?」
微笑して首を傾げた。


渚は骸に見えないように拳を握った。

「…の店に見に行きましょう。渚なら何でも合いますよ。」

「うん。…そうだね。」


金持ちなんて大嫌い。

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