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「38.2度か…」
今朝起きると骸が風邪をひいていた。
まあ無理もない。
「大丈夫?」
骸に聞くと骸はにっと笑って
「まあ」
とだけ言った。
38度もあるが、なんだか骸は元気そうというか肌もツヤツヤしていていきいきしているように見える。

むしろ渚の方が疲れていそうで、目の下にはうすくくまもある。
昨日骸との行為が何時まで続いたのか考えるだけで疲れる。


「どこか行くんですか?」
出かける準備をする渚に頭に冷えピタを貼りながら骸が問う。

「ちょっとね。骸だって風邪ひいちゃったし、何か食材。」
窓から見える雪景色は見るからに凍えそうで、渚は身を震えさせる。
実はさっきついでに熱を計ったら渚も微熱があった。

そんな渚をよそに
「僕も行きます。」
病人が言うセリフじゃない。
「何言ってんの!?倒れても知らないよ」
渚も骸に言ってみるが、やはり骸はいきいきしていて、すっくと立ち上がる。


「厚着すればへっちゃらですよ」
「…気分悪くなったら言ってよね」
そう言う渚に骸は嬉しそうに、そしてはいっと返事をした。



骸に渚は厚着させ、マスクをしてやり、マフラーを巻いてやる。
2人一緒に出て渚が鍵を閉めていると

「ああ」

声の方を見ると隣のおばさん。
マスクしてる骸をじろじろ見るおばさんに渚が頭を下げた。
「お、おはようございます。昨日はご迷惑おかけしてしまいました。」

おばさんは渚の礼儀正しい姿を見てにっと笑う。
「良かったよお、このあんちゃんが不審者じゃなくてさあ」
と豪快に笑った。

「で、何だいあんたそのマスクは?」
「えっと、…昨日外にずっといたら案の定風邪を…」
骸の言葉にまた豪快に笑った。
「せいぜい彼女に風邪うつさないようにね」


そう言っておばさんは部屋に戻って行った。
きっとゴミ捨てに行ってきたとこなんだろう。

骸は苦笑い。


そして階段を下り、静かな雪景色を眺めた。
「雪」
静かに心のうちではしゃいでるような渚に骸は熱で赤かった顔をまた少し赤らめた。
マスクで渚には見えないけど。


風邪薬がなかったのでまず薬局に行き、風邪を買い
そして次にスーパーへ。

色んな食材を次々とカゴに入れていく。
たくさんの荷物を2人で抱えて家へ。
骸は帰りにでも手を繋ごうなんてのんきなことを考えていたけど、
こんないっぱいの荷物じゃできそうになかった。


すぐ家につく。

何だかつまらない。

骸は時計を見る。
まだ12時前だ。

買った食材を冷蔵庫に入れている渚を見る。


まだ渚とデートらしいことしたことがない。
このまま渚と恋人になって初めて迎えたクリスマスを終わらせたくない。

そして骸は先ほど買った風邪を口に含み、渚に言った。
「渚っこれからどこか行きましょう!」
渚がそう言い放った骸を眉をひそめて見る。

「何言ってんの?」
困ったような顔で聞く渚に骸が駄々をこねるように言う。「だって、クリスマス今日で終わっちゃうんですよっ」
渚はうーんと唸るが
「僕、渚とクリスマスデートしたいです」
渚は必死にすがってくる骸に
「風邪は大丈夫なの?」
聞く渚に骸はぶんぶん首を縦にふる。

「ぜんっぜん大丈夫ですからっ!ねっ行きましょう!」
骸の必死な態度に折れ、渚は首を縦に振った。
「しょうがないなー…ちゃんと服着込んでね。」
渚の言葉に骸は目を輝かせる。
風邪をひいているなんて嘘のようだ。














「ここでしばらく一緒にいましょう」
来た場所は駅通り。
噴水があって、昼間だけど雪雲ですこし暗い街についているイルミネーションがきれいだ。

そんな場所だからやっぱりカップルばかり。
雪が降っていようが傘ひとつあれば困らないようだ。

ひとつだけ空いていたベンチへとダッシュで向かう骸。
渚は恥ずかしくて、同時に楽しかった。



骸がコンビニで買った中華まんを渚に差し出す。
「おっきい」
普通の中華まんより大きくて渚は笑った。
あったかくておいしい。

「ここで渚を見せびらかしてれば僕の気もおさまりますから。」
骸の赤い頬が可愛い。
渚は昨日の自分のわがままでこうなったことに少し罪悪感。
骸も悪かったけど。


「じゃあイチャイチャしなきゃだめじゃん」
渚は骸の手を握り、体を完全にくっつける。

あったかい。

骸が照れ笑いするのがなんとなくわかった。

何だかぼーっとなる視界の中、渚は顔を赤く染めた。


くらくらするくらい幸せな時間。

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