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渚が鍋の片付けをする。
もうお腹いっぱいだ。

居間に戻ると骸が渚に向き、正座した。
そして

「せっかくのクリスマス、台無しにしちゃってすいませんでした。」
渚は骸のへんてこ頭を睨む。
「…先に謝っとく。あたしこそわがまま言ってごめんなさい。」

骸が頭を上げるが渚の表情はまだ険しいまま。

「ここでハッキリ骸の気持ち聞かせて欲しいの。」
「え、僕…?」
骸の言葉に頷き

「嫌な質問しちゃうけど…
前からずっと気になってた、

骸はミリアさんとやり直したいの?」

骸は眉間にしわを寄せた。

「何が言いたいんですか?」
骸も少し前のめりになり、睨み合いになる。
意地になった骸の態度に少し傷つくが、必死にそれを隠した。

「ミリアさんのことで頭いっぱいなの?ってこと」
骸はまた眉間のしわを若干深くする。
「そんなことないですよ。」
「じゃあ骸はあたしのことで頭いっぱいなの?」
そう聞くと一気に骸の眉間のしわが消えるがやはりまだ少し眉に力が入ってる。
「…そうです。って言ってもまだ質問続くんですか?」
渚は微妙な反応にまた少し傷つくが、眉間のしわを深くして顔に出ないよう隠す。

「ミリアさんのこと忘れてとか、ミリアさんとの思い出のもの捨ててとか、そんなこと言わない。

でも、骸の中でミリアさんの存在の方があたしより大きかったら、嫌に決まってるじゃん。」
「………。」
黙って俯く骸。
何も言ってくれない。
それが悲しくてだんだん心が折れてくる。

本当にあたしばっかりみたい。
「いいの、ミリアさんが大切なら、中途半端にあたしといないでミリアさんと一緒になってくれた方が…」
そんなこと言うけど自分で苦しくなってくる。
骸が拳を握ってる。
でも、かまえたりしない。
骸は人を殴るような人じゃない。

だけど、その骸の沈黙が渚をまた苦しめる。

涙をこらえて変な顔になる。

黙ってる骸に渚が問いかける。

ついに涙が落ちた。
本当にだめだ。
「あたしの言ってること、わかる…?」
骸がやっと顔をあげる。
「……。」

渚は黙ってる骸に笑顔を作って


「あたし、骸の一番じゃなきゃダメみたい…。」
「っ…!」
再びうつむき顔だった骸がふっと顔を上げた。

「あたしは、二番目じゃ絶対満足できそうにないよ。」
骸は渚を見つめて頬に触れる。

「やめて、…」
骸の手をどかそうとする。
「あんな可愛い人だもん、結婚考えた人だもん、…骸がミリアさんを選びたいならもう今日で…」
ばしんっ
そこで今日二度目の乾いた音。

今度は渚がきょとんとしてる。
「………は?」
骸はものすごい剣幕で渚を見る。

「僕そんなに渚を愛してませんか?」
「……」
目に涙をためる渚に
「その先の言葉…もう二度と言おうとか思わないでください。」
骸が渚にキスして、そしてまだ唇が触れ合ってるまましゃべる。
「クリスマスの今日、僕が過ごしたいと頭の中に浮かんだのは渚ただ一人です。」
そしてほんの少し唇を離す。
「君には僕の"最後"になってもらいたいと思っています。」

渚はその言葉の意味に溜めていた涙を流す。

「僕は二番三番でもいいと言う人より、一番じゃなきゃ嫌だと言う君を選びます。」
微笑み渚の髪を撫でる骸。

渚は涙を抑えるように顔を手で覆い、
「すき、」
めったにない渚の愛の告白に骸は顔を赤らめてつい照れ笑いして頭をかく。
「すき…好き。」
「渚…」
骸が感動していると、渚がキスしてくる。
そして骸の方に倒れる。

「世界一愛してますよ。」
「何言ってるかわかんない。」
またお互い唇が触れ合ってるまま会話する。

そして、骸が渚の頭をおさえてだんだん濃厚なキスになり、
骸が渚の服を脱がそうと腰に手をかけると


「あ」
「え"?」
渚が突然顔を離す。
同時に唇と唇から糸をひく。

「ちょ、寸止め…」
骸が真っ赤な顔のまま渚を見上げる。
渚はそんな骸に

「クリスマスプレゼント渡すの忘れてた。」

そんな渚に骸は涙目で
「もう、渚がいいです…。」
渚はそんな骸を座った目で見て可愛い柄の袋をちらつかせる。
「いらないの?」
「渚ごといただきます。」
「お前最低だな。」
そこは譲らない骸に渚も冷たく言い放つ。
とりあえず骸の服をひっぱり、起きあがらせる。


「開けていいですか?」
骸が箱を開けると中には

「…ん?」
重みのある
「本…?」

いや、違う


「アルバムですね…」
骸の目が輝く。
だが、それはすでに開けられている様子で
アルバムの表紙には骸と渚のツーショット写真が貼ってあり、女の子らしく可愛くデコられている。

そしてアルバムを開くと
「あ、…」
まだ少ないが、付き合い始めたときの写真や昔の2人の写真まである。
写真が貼られているページは2、3ページ。
まだまだ写真が貼れる。

「これから何冊も作って行こうね…なんて」
渚の冗談まじりの言葉に骸は
「……」
貼られている写真をなでる。

その骸の表情は、すごく幸せそうで

渚はミリアとの写真の骸を思い出す。



今の骸の方が幸せそう。

あたしにも

あたしにも骸をそんな幸せそうな顔にできるんだ。

渚は嬉しくてつい微笑む。
骸は小さい頃の渚の写真を見て微笑む。
「これから、もっと増やしましょう…思い出も写真も…」
骸は渚にありがとうございますと言いアルバムを抱きしめた。
「………僕もちょうど良いプレゼントを渡せます。」
骸が渚の頭にぽんと一瞬手をのせ

「これです。」
「…あ!」
それはデジタルカメラ。
「渚写真撮るの好きなんだと思って。」
骸の差し出すカメラに渚も目を輝かせる。
「うん、好き!ありがとう超嬉しい…!」
渚も骸からのプレゼントを大事そうに抱きしめた。


「このカメラでたくさん思い出作ろうね。」
微笑む渚に骸は
「じゃあさっきの続きを♪」
そう言う骸に渚は
「ねーえ"ー、本当そういうのでぶち壊しにしないでよー」
「だってこの前もエッチしなかったし、てゆーか僕ら付き合ってる割には全っ然エッチしてませんよねっ!?」
必死に訴える骸に渚がムッとする。

その渚の表情に骸もマズいと思ったが、そこは譲りたくなかった。
「ぼ、僕だって男なんですよ…!!」
涙目で渚にすがるが

渚は


「まだ渡すものあるの」
ムッとしたまま言う渚に骸が首を傾げる。

「何ですか?」
渚は骸を睨みつけ、ポケットから銀色の鍵をちらつかせる。

「いらないなら受け取らなくていい。」
そう言う渚だが、骸はぽかんとしたまま鍵を見つめる。

「い、いんですか…?」
骸が正座して真面目な顔で聞く。
渚が、ん。と鍵を骸に差し出すと、骸は渚の手ごと鍵を握りしめる。
「も、もらえないとばっかり…」
えぐっえぐっ…と泣きじゃくりながら骸がまた泣きつく。

「いつでも会いに来てね。」
そう言う渚にうおーんと抱きつく骸。
「エッチしにとかはナシだから」
そう言う渚に骸は一瞬つまらせながらも首を縦に振る。

そんな骸に渚は笑って

「でも今日は特別な日だから」
すぐ近くにあるベッドに腰掛ける渚。
骸も目を輝かせる。
「聖なる夜、骸からの愛を受けましょう。」
笑って言う渚に骸も笑った。

メリークリスマス。

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