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ピンポーン…

雪が降るクリスマスの正午過ぎ。
渚の暗い静かな部屋にインターホンが鳴り響く。

渚は寒さや色んな気持ちで毛布に身を包んでいた。

せっかく頑張った化粧も髪型も服装もぐちゃぐちゃだ。

だが、化粧を落とす気にも服を着替える気にもならない渚はそのまま毛布にくるまっていた。

渚は居留守を使おうとしたが

『…〜♪〜 ♪』
携帯が鳴った。

再びインターホンが鳴る。

聞こえてしまったのだろうか?


渚はそういえばさっきから鳴ってたなと思い、携帯を開くと着信とメールが数件。

「…?」

渚は着信履歴を確認すると全部骸から。

「何よ…ミリアさんとやり直しますってか…」
鼻で笑いながら続いてメールを見た。

『渚大丈夫ですか?』

「大丈夫って…何がよ…」
渚は他のメールを確認すると、その゛大丈夫゛のフレーズの意味がわかった。

風邪なら無理しないでください。事故にあってたりしませんよね?


「事故になんかあってないっつーの…」

涙をにじませ、唇を噛み携帯を投げる。
と、
ピンポーン…

またインターホン。
いないって言ってるのに!

渚は頭をかいた。

そして苛々しながら玄関まで歩くと




「渚…?」

ドアノブにかける手が止まる。

骸、?

渚は眉を潜めた。

「…何?」
警戒しながら低い声で言うとドアの向こうで骸が困惑してるのがわかる。
「え…?何って、今日クリスマス、約束…?」

自分が骸との約束をすっぽかしたみたいじゃないか。
渚は骸の反応に少し胸を痛めたが、頭を振るわせそれを振り払う。

「今日はあたしとは過ごさないんでしょ?」
渚が冷たい声で言い放つと骸は、え?と小さく声を漏らした。

「今日はミリアさんと一日一緒にいるんでしょって言ってるの」
ドア越しに渚の冷たい声が届く。

渚も反響する自分の声に少し大人気なさを感じる。
だけど、どうしてか素直になれない。


このまま鍵を開けたいはずなのに。

骸に抱きつきたいはずなのに。

たった少しの意地と嫉妬が邪魔をする。

「ミリアから聞いたんですか?」
渚は骸の問いにうなずくけど、そうだ、骸には自分が見えていないんだったか。
顔だけ少し苦笑した。

「ミリアには今日、ついさっき会ってきました。でも、ミリアとクリスマスの今日過ごすために会いに行ったわけじゃありません。それだけはわかってください。」
渚はそうなんだ…と呟いた。

骸にも聞こえたらしい。


「これからでもどこか行きましょう。」
骸が笑いかけてくれてるのがわかる。
わかるのに


「…ごめん、」
骸がまた声を漏らした。

「渚…?」


頬に冷たい涙が伝う。

「泣いてるんですか…?」
骸のその気遣ってくれる言葉で益々渚の心がしめつけられる。

「何で…?」
「…?」

おかしい


「骸は…あたしのこと傷つけないのに、
冷たくしないのに、



殴らないのに…涙が出る」
わかんない


「渚」

嗚咽を我慢してる渚だが、骸がドア越しから渚に呼びかける。

「渚…」そんな悲しそうな声出さないで

嗚咽が我慢できない。
呼吸が苦しくなるほど、喉が痛くなるほど涙が溢れる。





また骸が呼ぶ。





今日クリスマスプレゼントととしてあげようと思っていた渚の家の合い鍵。


「あの時渡しておけば良かったかな…?」

「…え、」
そうすれば骸が自分で鍵を開けてくれる。

こんなつまんない意地破ってくれる。


ダメなあたしじゃ骸に頼ることしかできないね。




骸、

呟いて骸に言う。














今日は帰って






こんな涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔見せたくないよ。

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