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「お待たせしました。」
骸がミリアの元へ来た。

「来てくれて嬉しい…。」
骸はミリアに微笑み、ミリアは再会して初めて微笑んだ骸に抱きついた。
骸はミリアの背中に手を回す。

しばらくその状態が続いたが骸が口を開いた。
「今日は、ミリアに会いに来ました。」
ミリアは首を傾げて
「…?ええ、嬉しいわ。…どこに行く?」
ミリアは骸を見上げたが、その週間笑顔を固めた。
骸の表情が悲しげだったから。
「会いに来ました。

が、今日君と一日過ごしに来たわけじゃありません。」
「え…?」

「僕はやっぱり渚を裏切ることはできません。」
ミリアは言葉を失う。

どうして…?


「どんな事情があったとしても、何も知らず突然姿を消された時、僕は本当に絶望しました。…クリスマスの今日一日だけだとしても、渚より君を選ぶことはできません。」

「そ、んな…」
ミリアは涙で骸の顔をにじませる。
「愛していました。でも、今僕は君より愛する人を見つけました。」
骸は会釈してミリアを離して学校を去った。


ミリアは跪き、嗚咽をもらし泣き続けた。


雪が一層ミリアの体と心を冷やした。




















骸はミリアに心から謝りながら歩いた。

ミリアとやり直せたなら。

そう願った自分が何回何百回何千回顔を出したか。


だが、もし今ミリアとやり直しても

きっと渚の泣き顔を思い出してしまう。


ミリアとは喧嘩もあまりなかった。
泣かせたことも自分の中ではなかったし、
いつもいつも楽しかった。
傷つけたことも傷つけられたこともあまりなかった気がする。


だけど、

渚の笑った顔も照れた顔も怒った顔も



泣いた顔も怯えた顔も見た。

全部知っている。


だから、

もう渚の泣き顔はできるなら見たくない。

吉徳と付き合っていた時から感じていた、彼女を守りたいという気持ちを半端にしたくない。

骸はミリアへの気持ちを完全に絶ち、渚に渡すクリスマスプレゼントを持って駅に向かった。



駅に着いた。
時刻は10時53分。

待ち合わせまであと7分。
だが渚の姿はまだない。

骸はさっきまでミリアと渚のことを考えていたことで雪が降り始めていたことに気づかなかった。骸は空を見上げ静かに落ちてくる白い世界を眺めた。

「ホワイトクリスマス、ですね…。」
はあ、と息をはくと視界に白い息が見える。

渚はしゃぎそうだな、なんて少し頬を緩めながら骸はベンチに座った。


街に人が行き交う。
親子や友達同士もいるが、
やはり夫婦やカップルが目立つ。
骸も渚が来るのをワクワクしながら待った。

骸はふと携帯を開くと、時刻は11時7分。
朝起きるの苦手そうな渚を思い、また頬が緩んだ。



はやく会いたいな。


そう再び雪が降る空を仰いだ。











新着メールなし。

「……。」
骸は少し拗ねたように眉を潜める。
時刻は11時56分。

さすがに骸も疑い始めた。

骸は今更ながら渚に電話した。
が、繋がらない。
再び電話したが、やはり繋がらない。

骸は何だか心配になり、渚の家に向かった。










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