36
秋が過ぎてもう少しでクリスマス。

学校生活も残りわずかになってきた。
渚はこの日、骸の家に招待されていた。

「き、緊張するな…」
骸の家に来るのは初めてではないけど、久々だったしそれに今日は

骸のご両親がいるという。

渚は手土産を持ち、使用人に案内され、広間へ。

そこにはいつもよりキッチリした骸が。
「骸、お邪魔しています。」
とかしこまって骸に会釈。
骸はそんな渚を笑った。
「いらっしゃい。どうぞ」
と手を引かれる。
そして一段と大きな扉の前に。

渚は息をのみ、隣にいる骸に言う。

「ねえ、あたしこの格好で大丈夫?」
そう聞いてくる渚に骸は微笑み
「制服が一番自然です。」
そう言い、渚の心の準備ができてないうちに骸がドアをノックする。
そして
「失礼します。」
そう言い、ドアを開けて入る骸。
渚も遅れを取るまいと骸に続く。

そしてついに、

「まあ、渚ちゃん!お久しぶり!」
綺麗なご婦人。
「こんにちは。」
貫禄のある紳士。
「……っ!」
骸のご両親だ。
昔一時だけだったけど一緒に田舎に滞在していた。
とても優しい夫婦だ。

「お、お久しぶりです…!渚です!」
これ、どうぞ…と手土産をお母さまに渡そうと近づくが、

「会いたかったわよ…!」
お母さまに抱きしめられた。
渚は心地よい香りを骸と重ねる。
ためらいながらも背中に手を回すと昔のことを思い出す。

「今日泊まるんでしょう?」
思い出にひたる渚にお母さまが瞳を光らせながら聞いてきた。

「は、はい…!ご迷惑でなければ!」

そう言い、ちょうど夕食時なので食事に誘われた。


昔に戻ったように他愛ない話しをして一気に時間が過ぎる。

そして、口数の少ないお父さまが口を開く。
「ところで渚、お父さんは元気か?」
「あ…はい、元気です。」
いきなり父の話しが出てくる。
骸も一瞬笑顔が消える。
「あいつも、一人で考え込むタチだからな…。渚が支えてやってくれ。」
渚はただはいとしか言えなかった。


そしてお母さまが次に口を開く。

「渚ちゃんはあの頃からずっと本当の娘みたいに思ってるのよ。」
渚は嬉しくてはにかむ。
が、話しが意外な方向に
「骸、渚ちゃんに再会する前に結婚決めていた人がいたんだけど…」
骸がそこで咳払いする。
だが、お母さまはそんな骸に困った顔をしたあと

「昔からあなたしか考えていなかったから本当に良かったわ。」
「あはは…。ありがとうございます。」
渚は喜んでみせたが、骸の表情が曇ったことに内心傷ついた。














骸の部屋。
お母さまとお風呂に入ったあと、今骸が風呂に行っている。

渚は広い広い部屋にポツンと佇む。

まだ家には帰らない。
けど、そのうちまた広い部屋に一人という生活に戻るのは嫌だった。

狭い部屋ならテレビや音楽だって響く。
だけど、こういう部屋じゃ小さくて殺風景で
一人じゃあまりにも寂しすぎた。
渚は大きいベッドにぼふっと身を投げる。

ふかふかしていて気持ちいい。

と、骸の携帯がどこかで鳴った。
渚はメールだろうと思い、そのままでいたが、着信音が長い。

渚が骸の携帯を探しているうちに、ふと机の上に伏せてあった写真立てに気づく。

倒れていただけだろうと思い、それを立て直すと


「……っ」

そこにはミリアと骸の幸せそうに笑う写真。
骸の照れた顔や、怒った顔、はにかんだ顔は見たことあるが

これだけ幸せそうな顔は多分知らない。
隣のミリアもとても幸せそうで、この二人の間に誰も入れないくらいくっついている。
それは身体じゃなくて心にも見えた。

携帯の着信音はとっくに切れている。
渚は再びベッドに身を投げた。


骸が帰ってきたときのために笑って話せるように、必死に楽しいことを考えようとしているうちに

眠りに落ちた。

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