34
ついに面接日が翌日へと迫った。
この日骸が大学終わりに渚の家に来てくれた。

明日の面接試験に備え、骸が面接練習の相手になってくれるという。
「え"いいよ。」
とあからさまに嫌な顔をして遠慮する渚。
だが
「はい!じゃあ入室からどうぞ!」
「いやいやいや…」
もうやる気満々の骸だが、はっきり言って少なからず、渚にとっては恥ずかしい。

「何やってるんですか?早く」
といつの間にやら、ダテだろうけど、眼鏡を装着している骸。

渚は渋々居間から出て、コンコンコンとノックをする。
どうぞ、と声がしたのを確認し、
「失礼致します。」
と部屋に入る。が、
「待ったぁあ!そこは先に会釈!」
「あ、はい。」
そして居間から再び出、ノックをして会釈なんちゃらを何回もさせられた。
それから志望動機、自己PRなど云々しているとあっという間に夕方。
「勉強の方は大丈夫なんですか?」
骸がそう聞いてきて、渚が答える前に骸が顔色を悪くし、
「ぼ、僕先週もずっと居座って渚に勉強させてあげられませんでしたね…!」
そう骸が渚に頭を下げるが、
「いや、てかあたしが骸にいてって頼んだしね。」
と渚は頭を下げる骸の肩に手を置く。

「でも…」
「大丈夫だって。大学受験だし、そんなに心配いらないって。」
それでも腑に落ちていなそうな骸。
「最初面接練習嫌だったけど、骸のおかげで為になったこといっぱいあったよ。」
骸は顔を上げて
「渚ーっ!!」
と涙目になって抱きついてくる。
暑いから勘弁してよと苦笑いする渚に
骸が少しだけ腕に力を入れる。
「絶対、受かりますように…。」
「……。」
ぽかんと口を開けた渚だったが、微笑み骸の背中に手を回す。
「受かりますように…。渚が受かりますように…。」
骸がおまじないかのように渚の髪を撫でながら言い続ける。
大げさだな、なんて笑ったけど、
すごく背中を押されて心強かった。




















「鈴鹿渚さん。三番の面接室にどうぞ。」
ついに渚の名が呼ばれた。
「はい。」
そう言われ、三番と貼られたドアの前に行き、深呼吸。

骸に教えてもらったことをそのままする。
ノックするとドアの向こうからどうぞ、と声がするのを確認し
「失礼します。」

と、部屋に入った瞬間、体が固まった。

「お願いしま、す…」

面接官を見て渚は頭が混乱する。

「はい、では学校名とお名前を。」

「は、はい。…立…高等学校より参りました、鈴鹿渚と申します。本日はよろしくお願い致します。」
わけがわからない。


「はい。ではお座りください。」




なぜミリアが目の前にいるのか。













「はい、ではあなたは普段どのような生活をなさっていますか?」
ミリアは志望動機も聞かず、その質問をしてきた。

「はい、私は普段学校に通いアルバイトをし、家の家事をする生活を経験しています。」
「部活は?」
「し、しておりません。」
なんだか彼女の微笑みが怖くて、緊張と似たようなものがつきまとう。

そして
「あなたの家系ってお金持ちなのね?」
「え…?」
そんなこと書類に書かれているだろうか?

「そ、そんなことは…」
「鈴鹿家のご令嬢と存じ上げます。」
何を知っていて何を言いたいのだろう?

「じゃあ、他の質問に参りましょう。あなたはどちらで本校を知りましたか?」
ぎくりと肩が跳ねる。

「し、知り合いがこちらに通学していまして、…その知り合いから…。」
骸のことを聞きたいのだろうか。

「じゃあ最後に。あなたはどのような結婚をする予定ですか?」
「え…?」
聞き返す渚にミリアが指を折ながら言う。
「ひとつ。あなたを愛する人と結婚。ふたつ。親の決めた結婚。みっつ。お金持ちと結婚。」
「な…」
「ご令嬢て大変よね?愛し合ってる相手がいても結婚できる相手を自分で選べないもの。」
渚は面接なんてことを忘れてミリアに問う
「み、ミリアさん…あなたあたしのこと何で知ってるんですか…?」
ミリアは微笑み
「今質問してるのは私よ?」
渚は眉間にシワをよせ
「私を愛する人と結婚します。」
そう力強く言った渚にミリアは笑い、
「よくわかったわ。」
そう言い、

「はい、ではこれで終了致します。」
「ま、待ってください…!あたしの質問は…」
渚が言ったが
「これから嫌という程会うわ。その時にして。」
そう言い捨てたミリア。
渚はありがとうございましたとだけ言い、面接室から退室した。



「……。」

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