32
「ん…」
朝。
骸は目覚めるが横には渚の姿はない。
が、すぐに台所の方からの音で渚が朝食を作ってのがわかる。
骸はとりあえず顔を洗い、歯を磨き、再び居間に行くとすでに朝食が並んでいる。
まさにテレビなどで良くみる朝ご飯。
骸は何だか急にくすぐったくなって台所に行くと、渚のエプロン姿が。
渚は物音で気づき、手際良く料理しながら
「おはよう。」
「おはようございます…。」
骸は何だかそんな渚の後ろ姿にドキドキしてしまう。
「良く眠れた?」
正直昨日は寝つきが悪かった。
むしろ、健全な男子に好きな相手と同じベッドで"ただ"一緒に寝るなんて無理な話だ。

実は少し触りまくろうと思ったが、抑えられなくなるのが目に見えたためやめていた。


骸は昨日の自分の苦労を讃えながら
「まあ」
とだけ言っておいた。
渚はふーんと言って味噌汁の味見している。
骸はまだ体がムズムズして、ひらめいた。

「えっ…」
骸が後ろから抱きつく。
「どうしたの?」
聞く渚に骸は
「こ、こういうのよくしてませんか?」
「誰が?」
「て、テレビとか…一般の家庭…」
骸は妙にドキドキして、どうすればいいのかわからなくなってきた。
「わかんないなあ」
渚はそんな骸を笑う。
「ごめん、危ないから」
と言って渚は味噌汁をお椀に。
何だか寂しくなった腕はそのままに。
渚はそんな骸を見てまた笑い、味噌汁を置いて

「おはようのちゅう」
とゆっくり触れるだけのキスをした。
「……。」
固まる骸に渚が慌てた。
「わっ!!スベった!?引かないでよ!」
そう言う渚に骸も慌てて弁解する。
「ひっ引いてないです!…その、何か…」
お互いなんかおかしくなって笑いあった。
「食べようか」
「はい。」
こんなに楽しくてたくさんしゃべってたくさん笑い、色んな緊張が骸には新鮮で
懐かしさも少し感じた。



「お、おいしい…!!」
正直渚は一人暮らししながらも毎日弁当やカップめんのイメージがしていた。
それが伝わってしまったようで
「失礼ねえ!あたしは毎日弁当とかカップめんとかで済ませてるとでも思ってたの!?」
「エスパー…」
聞き取られてしまい、頭突きされた。
「痛っ!石頭!!」
骸の涙目に渚も涙目になるほど大笑いした。


後片付けは骸がやった。
何だかまだ頭がじんじんする。
「ありがとう骸。」
でも、"許してしまう"とはこういうことかと思う。

「骸今日大学とか用事ある?」
渚が聞くが、用事なんてない。
「ないですよ。」
渚はそれを聞いて、
「じゃあ今日どっか行こうよ。」
はしゃぐ渚に何だか新鮮さを感じる。
「渚ってそんなにテンション高くなるんですね…」
「あたしのこと冷たい女みたいに言わないでよ」
「でも、無理矢理性格分類したらクールですよね?」
「クールって良いのと悪いのでわかれるけど…」
骸はショックを受けてる渚を笑い
「悪い方」
と言うと、渚はまた頭突きした。
「ちょ…!渚のそれ洒落にならないんですけど!!」
頭がグラグラと回る。
いや、本当にと机にうなだれる骸をよそに渚は財布と携帯だけ持ち。

「じゃあ行こう」
「え?」
渚の格好は上がTシャツに下が短パン。
軽い格好だ。
「どこ行くんですか?」
骸がつい聞くと渚は
「スーパーとか?」
「あ、出かけるってそっち…」
渚はふと意味深に微笑んだ。
「ちゃんとしたデートはまた今度行けるよ。」
「…そう、ですね」
渚は額をさすりながら立ち上がった骸に言った。
「今日は2人でいようよ。」
骸はまたやり場のないくすぐったさを感じる。
骸は渚に微笑み返し
「じゃあさっさと買い出しに言って早く帰ってきましょうか。」
渚は満足そうに微笑んだ。





スーパーに行き、お昼と夕飯の食材の買い出し。
そしてレンタル店でDVDを数本借り、帰りにコンビニでアイスを買って、それを食べながらアパートに帰った。


お昼を食べて、借りたDVD。
ミステリーものを2人でくっついて見た。

そんなおうちデート。
渚は吉徳といつもこの部屋で過ごしてきたけど、
こんなに2人くっついたりしゃべって笑ったりなんてなかった。

こんなにも骸と過ごす時間が短い。
もう夕飯も済んでしまった。
お風呂も入ってしまった。

8時。
骸はいつまでいてくれるのだろう?
吉徳に感じていたのは"いつ帰るんだろう?"
とばかり考えていた。
同じようでもまったく違う。

渚は骸を見つめた。
骸が渚に気づき何ですか?と笑いかける。
が、渚はふと骸の額が少し青みがかかってるのに気づいた。
「骸。おでこどうしたの?」
渚は笑いながら言う。
骸も額に触れ、
「どうしたのって、渚の洒落にならない頭突きですよ!」
と笑った。
が、渚はそれで笑みを消した。
「え、あたしそんな痣できちゃうほど、」
骸のそばに行き、近くで見る。
「そうですよ」
まだ渚の変化に気づかない骸が冗談まじりに笑う。
が、
「ごめん…そんな痣できるほど本気のつもりじゃ…」
渚の表情に骸は苦笑いしながら
「わかってますよ。」
が、渚の手が骸の額に伸びた時微かに震えているのに気づく。
「渚…?」
「ごめん…!」
何か怯えてるような渚に骸が声をかける。
「渚、大丈夫ですから。ね、ほら。」
とにかく渚の手の震えと何かの恐怖を取り除きたく、うすく痣になってる額を叩く。
内心とても痛い。
けど、渚はやっと謝るのをやめ、震えも小さくなった。
「ごめん、なんか…思ってた以上にトラウマになってたっぽい」
"それか"と思い、骸は渚の小さくなった体を抱きしめた。
すると肩が震えていたのがわかる。
「嫌なの、この体の芯が震える感じ…」
渚が骸の背中に手を回した。

「帰らないで、」
「……はい。」
渚は骸の首筋にキスした。
「渚…」
骸は体が熱くなりはじめたのを感じて渚を離そうとしたが、渚は首筋から鎖骨、鎖骨から胸元へと唇を這わせる。
「渚っ…!」
渚のこの行動が"故意"かどうかはわからないが、歯止めが利かなくなる前に骸は渚を離さなければと再び渚の名を呼ぶ。
「渚、やめ…」
渚は唇を離した。
それに安堵しつつ寂しさを感じる。
が、そんな骸の手を引く渚。

骸は立ち上がり、だがすぐ座らされた。
しかし、座った場所はベッド。
「え…?」
骸は渚を見るが、渚は骸に身を寄せ骸ごとベッドに倒れる。
そして先ほどの行為が再開される。
「渚、…」
骸はもう声を出すのもままならい程千切れそうな理性を無理矢理繋ぎ、また渚を呼ぶと

「やなの…?」
「…?」
渚はまっすぐ骸の目を見つめて
「あたしの脳みそ


骸でいっぱいにしてよ」

骸はその言葉でもギリギリ理性を繋げた。もうすでに自分の体は"その気"だ。

でも、理性を繋げたのは



すぐに理性を手放すつもりだったから。




骸は渚との位置を逆転させ、渚を真上から見て言った。

「手加減なんて、しませんから…!」

すでに動機は激しく、呼吸も落ち着かない。

「いいよ。」
渚のとろんとした表情に一層下半身がうずく。
「後悔とか、ナシですよ…?」
渚は返事の代わりにただ微笑み

骸の胸元をそっと指先で撫でた。

理性が音をたてて千切れた。

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