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「とにかく、あたしその人と食事なんかしないから…」
渚は料理を見ながら言った。
「まあ、その話はまたあとでしなさい。今は食べよう。」
そう言う父だが、骸と渚はやはり難しい表情。
せっかくなのに気が進まないまま食事をした。

とりあえず3人はファミレスを出た。
「まあ、渚。骸君。君たちは若いんだ。今の恋もあればこれからの恋もきっとある。」
「何よそれ…」
渚の言葉には答えず、父は骸を見て言った。
「骸君。君はさっき渚とは8月からそう言う関係になったと言ったね?」
「はい…」
「なら、まだ渚への気持ちは単なる"恋"だろう?まだまだ"愛"なんかじゃないだろう。」
「それは…まだまだ時間は浅いですが…」
骸は少し身をひく。
渚も拳をにぎった。
「そんなんじゃあ、まだまだ渚を愛せやしない。君は大して渚の良いところも悪いところもわかっていないだろう?」
「……。」
「きっと時が経つにつれ渚と共に過ごす時間が嫌になるときもある。」
「そんなことありません!!」
骸が父を睨む。
握った拳が震えている。
「そうか。ならもっと渚と共にいる時間を増やしてみなさい。渚と恋人としての時間がそれだけなら、渚と結婚したいなど思うのは当たり前だよ。でもね、そんな浅いまま渚と簡単に結婚だなんて言わないでくれ。」
「……。」
何も言い返せない。
父はそんな骸を見て、渚に向いた。
「渚。お前は鈴鹿家のたった1人の娘だ。気にくわない縁談も呑んでもらわないと困る。」
渚は父を睨みつけた。
「娘を売るの…?」
「そうじゃな…「そうじゃない!!何よ鈴鹿鈴鹿って!!あんたたちがあたしに何してくれたのよ!!」
「じゃあお前は鈴鹿に何をしてくれたんだよ?」
その父の冷たい目に渚は身じろぎした。
「勝手に縁談を進めてほしくないならうちに帰ってこい。お前が大学に入れば立派な大人だ。すでにお前は"そう言う目"で見られてるんだ。」
父はそう渚に言い捨て、骸の肩を叩いた。
「じゃあ骸君。渚とは子供を作らない程に。次会ったとき結婚だなんて言ってくれるなよ?」
笑いながら言った。
渚は絶望した。
自分の父がこんなに最低だったなんて。
「…鈴鹿さん…!!」
去ろうとする父を骸が呼び止めた。
振り向く父に骸がすがるように言う。
「僕が渚さんと結婚できる道はありませんか!?」
そんな骸に父は大笑いし、
「なら今よりもっっと君の家を大きくしてくれ。娘をやるならそれくらい利益がないとな。」
父はそう言って去っていった。
名ばかりで見た目から冴えなくて不健康そうで線が細い父。

渚は今までその見た目で嫌いにはなりきらなかった。
金持ちならブクブク太って指輪やアクセサリーを光らせ変な色のスーツを着たりするけど、それは父にはなく、本当にサラリーマンに見えていた。
渚は今まで嫌いになりきれなかった父を本当に恨んだ。
こんなに父が憎くなるなんて想像もしていなかった。
そして、
同時に悲しかった。


「品定めしてるんだ…」
「え…?」
骸が振り向くとそこには涙を流す渚。
「渚…」
「あたしを売る場所を品定めしてるんだ…!どこで一番高く売れるか…」
骸は何も言えず、ただ渚を抱きしめることしかできなかった。










渚のアパート。
父に刃向かうように2人一緒に過ごした。
ただテレビを見て、笑って話をして
一緒に夕飯を作って一緒に夕飯を食べた。
お互い別々だけどお風呂に入ったあと小腹がすいて少し外を散歩しながらコンビニに。
そして公園でまた話をして家に帰ってコンビニで買ったお菓子やつまみを食べながらまた話をした。
吉徳や今までいた"彼氏"とはこんなに話をしたりしなかった。
骸は"彼氏"というより"恋人"だった。

幸せとはこんなことだろうと思った。


そして、布団に入ったがHはしなかった。
骸は我慢してくれていたんだろうけど、渚の今までのことや、骸とのはじめての時のことを思い出すとお互い"その行為"には触れようとしなかった。
布団の中でもしばらく話をした。

だんだん眠くなって夢の中。
骸が強く抱きしめてくれたような気がする。

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