29
渚がミリアにみとれていると、突然手を握られた。
「あっ」
骸だ。
骸はチャラ男2人を睨みつける。
チャラ男2人は骸が来た瞬間肩を跳ねさせた。
そしてそのままミリアに視線を向けた。
「彼らのその処分はどうぞそのままお願いします。」
チャラ男2人は眉間にシワをよせたが、汗を流して膝をついた。
そんな彼らを横切る際、
「死ね」
と骸が言った。
それに再び肩を跳ねさせた2人。
渚の手を引いたまま骸は歩き出す。
「渚がお世話になりました。」
骸が友人たちに会釈する。
さりげないその言い方がどきんとした。
「あ、あの、ご迷惑おかけしました」
渚自身も彼らにお礼を言った。
骸は振り向きミリアに言った。
「それでは、今日はお先に失礼します。」
そう言い、骸は渚を連れ、学校をあとにした。











いつもの公園。

「……」
いろんな事があった。
今日文化祭に行ったことを後悔してしまうほど。
骸がお茶を差し出す。
冷たいペットボトル。
渚はふとつぶやいた。
「あたしって…ビッチなのかな…」
そりゃ骸との行為は、吉徳という恋人がありながらしてしまったことだったが。
「…そんなこと言われたんですか」
いつもより低い声音。
こくんと頷いて
「調教されてるだの、苛められたいんだだの……でも違うって言い切れなかった。」
涙をこらえて拳を握る。
「違う…違うよ…。痛かったし、ずっと嫌だった。
でも、それでもそんな関係が続いてたこと考えたら、言い切れなくて…」
「……」
「ビッチって言われたことだって、…何も言えなかった…。」
涙がとうとう出た。
骸がどうして?と今度は優しい声音で聞いた。
「あたし…吉徳がいながら、骸と仲良くなっていくうちに、…骸が好きだって思うたびに、骸となら痛くないのかな、とか…骸とならエッチしたいっとか…」
骸は拳を握った。
「気持ち悪いって自分でもわかってるんだよ。わかってたんだ…「…いです…」
骸がつぶやいた。
「僕は嬉しいです。」
「なんでよ…」



「僕としたいって思ってくれたんでしょう?それは渚が僕のこと男として考えてくれてた証拠でしょう。」



「あ……」

カチッと全てが繋がった。
「そっか…」
自分の気持ちさえもわからなくて気持ち悪くて仕方なかった。
でもやっとわかった。

「夏休み明けて、吉徳とあたしが別れたことが広まって…あたし、この前クラスの男子に告白されたの」
突然の告白だけど骸は
「…予想はしてましたよ。」
すこし嫉妬まじりに言った。
「あたし、その子のことフってすごいつらかった。」
この言葉だけなら誤解するだろう。
吉徳だったらすぐに渚を殴りにかかるだろう。
だけど骸は黙って聞いてくれる。
「でもそれは、彼があたしともうちゃんと話してくれなくなるからだと思ったから。男としてじゃなくて、友達としてクラスメイトとして話せなくなるのが辛かった。」
骸を見つめた。
「吉徳と別れたとき、すごく辛かった…。」
「渚…」
でも、その辛さは
「あたし、吉徳のこと男として見たこと一回もなかったって気づいた。」

あたしは


「あたし、恋愛なんてちっともわかってなかった…」
今まで付き合ってきた男の子達に謝りたかった。
「みんな良い"友達"だった…。でも、"恋人"になって、手をつなぐことも、キスをする意味も、全然わかんなかった。
だからいつだってすぐに終わってた。」
「え…?」
骸の瞳の光が微かに増した。
「吉徳ともすごく楽しかった。でも、やっぱり…裸で向き合った時からなんか違うってわかってた…」

だから痛くて苦しくて嫌で嫌でしょうがなかったんだ。


「でも、骸だけは違うんだよ。女の子と話してるだけで嫌だよ。いつも一緒にいたいし、手を繋ぎたいしキスもしたいって思う。こんなに嫌な女になるよ。」
必死に伝えたかった。
骸はただ呆然と渚の話を聞くと、
「じゃあ、渚…?」
骸は渚の顔を覗き込んだ。
「僕が初恋…てことじゃないですか?」
「…え?」
手をそっと重ねられた。
「そうなのかな…?」
骸の瞳が一層輝く。
「すごく嬉しいです。」
ふっと微笑んだ。

骸が本当に初恋なら、
本当に嬉しいと思う。

まだまだ恋愛なんてわかりきってないけど、

この胸の鼓動が"好き"の証なんて、
よくマンガやドラマで言ってる。


それを信じよう。

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