26
やっぱり吉徳は女生徒達に告白されることが多くなったようだ。
もう夏休み気分も消え、いつもの学校生活が再びもどってきた。
そして骸の大学の文化祭が今週と間近になってきた。


お昼休み。
友達とランチを食べ終わり、みんなで話をしていると

「ん?」
メールだ。
お昼にメールだから何かメルマガか
期待して骸かと思い、友達と別れたあとメールを開いたが
「…?」
文化祭でよく話をし、頭までなでたクラスのあの男子生徒だった。
内容は、放課後進路のことで話を聞いて欲しいとのことだった。

放課後になり、渚は彼の元へ。
「なに?」
彼はまだざわついてるクラス内を見渡し
「ちょっと勉強教えて欲しいんだわ。図書室行こうぜ。」
「?ああ…うん。」
そしてあまり行かない図書室に行く。
生徒はあまりいない。
先生も戸締まりや委員会活動時くらいしかいない。

机に鞄を置くと、彼は手招きして
「オススメの参考書とかある?」
「あー…学校のじゃあたしとしては、わかりづらかったかも」
「あ…、マジで?」
「うん。あたしの参考書見る?」
そう言うと彼はおう、と返事をした。
何だか今日の彼はとっつきにくい。
普段から話しているわけではないけど、とっつきにくい。

彼が椅子に座るのを見て渚も椅子に座り、参考書を鞄から取り出し、渡す。
「サンキュ」
「ん。」
しばらく沈黙が続く。

他の生徒が図書室を静かに出て行った。
益々沈黙が続き、飛行機が飛ぶ音がうるさく響く。

と、

パンッと勢いよく彼が参考書を閉じた。
ビクッと肩を跳ねさせ、渚が彼に問う。
「それ合わなかった?」
聞くが、彼はぐっと下を向いている。
と思うと
「あのさ…」
「うん。」

彼が顔をあげると、彼の顔は真っ赤だった。
「?」
「お前、さあ…。吉徳と別れちゃったの?」
「あー…うんまあ。」
そう言うと、彼は参考書を渚に渡した。
「あの、…さ…」
「……うん」

もうわかっていた。

「こんなこと言うのおかしいかもしんないんだけどさ…」
「……」

渚は下を向いた。




「お前のこと、ずっと好きだったんだよ…ね…」




「……………………………………ごめん」
それを絞り出すように言うと、彼の方から何かが抜けたような音が聞こえた。


「……好きな人が、大好きな人がいるから…。」
そう言うと、彼はしばらく黙ってははっと笑った。

「…そ、なんだ……」
またしばらく黙ると、彼がまた沈黙を破る。
「…俺じゃ…ダメなんだよね…?」
「……ダメだと思う」
そう言うと、彼はうなだれて
「…うん。わかった…」

「嬉しいよ…、ありがとう…。でもごめん…。」
渚は立ち上がって、図書室をあとにした。














帰り道。
残暑の秋の夕日が嫌に染みた。

決して深い付き合いでもなかったが、繋がりが消えた気配に心苦しさがあった。

だけど、やっぱり骸に代わるほどの繋がりや信頼を渚は持っていなくて
それに改めて気づかされて、心が寂しくなった。

そんな帰り道

「渚ー!」
振り返ると数週間ぶりにあう骸の姿。
こんな会いたいと思った時に会える人がいることがたまらなく嬉しかった。
涙が寸前まできた。
のども熱い。

骸が駆け寄ってきた。

「学校帰りですか?」
「…うん。疲れた」
涙を隠して少し甘えた。
「クフフ…お疲れ様です。」
そっと髪を撫でる手が温かくて優しくて

早く骸の大学に行きたいと思った。

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