24
二年前。
彼女、ミリアは骸の元から姿を消した。
たった一枚の紙切れを置いて。
その紙切れに書かれていた内容はあっさりとしていた。
『突然ですが、私は別の方と結婚することにしました。
私のことは忘れてください。』
頭が真っ白になっていた。
彼女とは、結婚を約束していたのだ。
指輪とプロポーズの言葉は数ヶ月前だった。
彼女はあっさりと違う男の元へと姿を消したのだ。
彼女は骸の捧げた指輪をしたまま骸の前に姿を表すことはなかった。
この先もないと思っていた。
が、それはあっさりと砕かれた。
ミリアを完全に忘れられていたのは、渚だった。
妹ととして可愛いと思ったのは勘違いで、
これはミリアの時に感じた、妹などではなく女性としての愛しさをいだけた。
やっと渚とこれから共に歩いていけると思ったら
思ったら
「骸君?」
正直胸がざわついた。
渚のことを忘れていた。
「ごめんなさい」
と、彼女は頭を深く下げた。
「……」
まぁそりゃあそうですよね。
とミリアを見た。
顔を上げたミリアは目に涙をためていた。
「っ…」
やはり一度は愛した人の涙には弱い。
「私、骸君のこと今でも好きなの…」
「だからどうって言うんですか?」
骸が言うと、ミリアは骸の手に触れる。
「やっぱり私には骸君しかいないってわかったの…!」
「そんなの…」
「お願い…!私とやり直して…」
骸は頷きそうになってしまった。
だが、
渚
彼女のたまに見せるふわっとした笑顔が脳裏をよぎった。
「失礼します」
周りの冷たい視線よりも
振り払うとしくしくと彼女のすすり泣く声が嫌に耳障りだった。
「やだ…」
渚がふとつぶやいた。
骸は渚の顔を見る。
「やだよ!」
渚が眉間にしわをよせる。
骸はつい吹き出してしまった。
「わかってるくせに」
骸の言葉に渚もにかっと笑った。
ゆっくり帰り道を歩いた夜。
色んなことがあった1日だった。