18
「お待たせ」
軽くTシャツを買い、濡れたシャツのかわりにそれを着た。

そして、忙しくてまだお昼を食べてなかったので、近くのファミレスに入った2人。

時刻は二時だ。

食べ終わり、しばらく話をしていた。

渚はふと彼女を思い出した。


「あの子と何かあった?」
「あの子…?あぁ、あの子ですか…」
骸は苦笑いした。

そして、アイスコーヒーを一口飲んで骸が続けた。
「最初の媚び売ってくる感じからちょっとどんな子か見てたんですが、…」
骸は一瞬真剣な眼差しで渚を見た。
「ん?」
骸は彼女との時間を思い出した。





























「骸さんて、渚ちゃんの何なんですか?」
甘い声が骸の耳には"懐かしくて"痒かった。

「…友達以上…だと僕は思ってます。」
「ふぅん…」
彼女は骸の綺麗な顔を眺めた。
「彼女って男好きですよねぇ…どぉ思います?」
男好き。

渚が…
「確かに渚は女の子より男の子に好かれてるイメージがありますね」
そう骸が言い、こちらに傾いたと思ったのか、彼女はぐいっとくる。
「だって、ずるいんですよ!渚ちゃん、中学から一緒だった吉徳君ていうすごく良い人をとっとと取っちゃうんです…!だからすぐに諦めたのにっ…見せつけてくるんです…」
目に涙を溜めて彼女が骸に抱きつく。
「え、…あの」
「なのに、骸さんまでたぶらかすなんて…!骸さん私骸さん好きになっちゃったんです!渚ちゃんと関わるのやめて!吉徳君みたいに不幸になるだけだわ!」

そこで骸は彼女の手首を掴み言った。

「吉徳君が不幸になるだけとは?」
聞き流せなかった。
あれだけ好き勝手しておいて、何が不幸だ。

「吉徳君のこと知ってるんですか?なら、話は早いですよねっ…」
「渚が不幸なんじゃなくて?」
そう言った骸に、彼女がまさか!と続けた。

「あんな金持ちが取り柄でしかない不細工で頭の悪い女に、格好良くてスポーツ万能で明るくて成績優秀な吉徳君にあんな…あんな淫乱女が合うわけないじゃない!」

骸は見る見る眉間に皺をよせた。
「金持ちが取り柄?不細工?頭の悪い女?…淫乱女?それはどうして…?」
「淫乱よ…!絶対あの身体の痣別に変な男と付き合ってるのよ!身体中に痣とキスマークなんかつけちゃって…!気持ち悪いのよあの女!ムカつくの!吉徳君の他にヤクザもんと付き合ってるのよ!なのに、私や吉徳君が好きな女の子たちに吉徳君との仲を見せつけるの!くっ付いてイチャイチャして…!」


「どうしてそう思うんですか?」


「どうしてって?吉徳君が好きな子はみんなそう言ってますよっ」
「吉徳君が渚に暴力を振っているとは思わないんですか?」
「吉徳君が暴力なんてするわけないですよ!」

そうなのか、
あの男は渚にばかり冷たい目を向けさせて

ずるい男だ。

「そうですね…」















「吉徳君には君たちのような子達が釣り合いますね。そう言ってきました。」
「…そ…うなんだ…」

気づけばもう夕方だった。

骸は呆然とする渚に無理やり微笑んで
「そろそろ帰りましょうか。送ります。」
そう言った。




「……」
「……」
夕日で影が伸びる。
その影を2人は見つめながら歩いた。
だけど、沈黙が続いていた。


と、

渚の携帯が鳴る。

「…あ、」
吉徳からだった。
電話だ。
出た。

「もしもし…」
電話に出た渚を見て骸は会釈して、そこで帰ろうとした。

が、

骸の左手が握られた。
「?」

「送ってくれるって言ったでしょ」
真剣な眼差しに骸は俯いた。

「何の用?」
『今日祭りあんじゃん。行こうよ。』
渚は短くはぁとため息をついてから
「悪いけど、あたし先客いるから」
そう言うと、吉徳の声音が変わる。
『あ?何言ってんの?』
「あたし、あんたとは回らない」
『あいつだろ…?』
「……」
『あの男だろ!!』
「だったらなんだっての?」
『お前何なんだよ!あいつに変われよ!』
吉徳の怒号が骸の方からでも聞こえる。

「渚」

渚は骸の目配せに頷いた。
そして渚は骸に携帯を渡した。

「もしもし…」
『よぉ。久々だね。』
「通話料が無駄です。さっさと話を続けてください。」
吉徳は舌打ちし、
『なぁ。この前のこと忘れたの?』
「っ…!」
骸が固まる。
『俺、浮気されたって学校で言っちゃうよ?渚いじめられちゃうよ?いいの?』
「…それは…」
骸が悔しさで拳を握る。
そんな骸の手から渚が携帯を取る。
そして、パワーキーを押して電話を切った。

「渚…!」
渚は背中を丸めて携帯を握った。
「あたし、知ってるから…」
震えた声で言う。
「あたし、吉徳が最低な男って知ってるから。あいつが音声録ったことも、わかったから」

渚は身体も声も瞳も震わせ言った。
「あたし決めたの。」

「渚…?」








「今夜言ってくる。」

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