17
苛々を抑えながら渚は働いていた。

骸と可愛い子はあのあと渚のもとにたこ焼きを買いに来て、教室の隅で一緒にイチャイチャたこ焼きを食べながら話している。


骸は何しに来たのだろうか。

「いらっしゃい!はいっ2つですねっ」
と、わざと声を大きくするが、隣の男子が威勢いいなと、喜ぶだけで、骸と女生徒はまったくこちらに見向きもしない。


苛々が増している自分にふと気づき恥ずかしくなってしまった。

「鈴鹿。だいぶすいてきたし、残りも少なくなってきたから呼び込み行ってきて」
と、また張り切ってる男子。

「え"ーっ」
嫌そうに言う渚に
「良い子だから。なっ☆」
と、ウィンクしながら頭を撫でられた。
何か鳥肌がたつ。

もう骸など知るかと思い客の呼び込みに行った。

早く終わらせて帰ってしまおう。

「三階三年六組教室にて、たこ焼き販売しておりますー!残りわずかですー!どうぞおいしいのでご賞味くださいー!」
腹がたっていたせいか、いつもより声の出が良い。

「三階三年六組教室にて、たこ焼き販売しておりますー!」
宣伝のプラカードを掲げながら人混みを歩き続けると、先ほどの他クラスグループに会った。

「渚ー。今度は呼び込みガール?忙しいねぇ」
だが、見れば三人しかいない。
「あれ?あの可愛い子は?」
聞くと
「あいつ、お前の知り合いとまだあそこにいるよ。あとで二人で回るんだと。」
男子が言う。
「はぁ"?」
本当に骸は何しに来たのだろうか。

あぁ、ただ文化祭にきただけか。

そうだよね。
あたしだって"見に来て"とは言ったが"一緒にまわろう、一緒に過ごそう"とは言っていなかった。

何だかモヤモヤして悲しいような寂しいような。


携帯を見たら、吉徳からの着信数件、メール数十件、クラスの男子からメール一件。

クラスの男子からのメールでは、
渚の呼び込み後、瞬く間にたこ焼きが完売したのであがっていいとのこと。

渚はすぐに教室に向かった。














教室に戻るとすでに後片付けモード。
客はもう入れないようにしてある。
骸たちも当然だがいない。

「鈴鹿!お疲れさま」
と、先ほどの男子。

「鈴鹿一番働いてくれたから後片付けはいいよ。あがって」
「……うん」
笑ってみせた。














下駄箱につくと、肩を叩かれる。
「渚」
「吉徳…」
骸かと思って少し期待していた反動か、がっかりが大きかった。
吉徳は少し機嫌が悪そうだった。
「何で電話にも出られねんだよ」
また始まった。
そう思い、あからさまに嫌な顔をした。
「あたしだって遊んでたわけじゃないよ」
「……」
吉徳が渚をじっとみて、だんだん迫ってくる。

「…?」
背中に壁。
「そうゆうトゲトゲしたの、何?俺お前のその流し目うずくんだよね」
「うそ…M?」
ふんと笑ってやったが、また迫ってくる。

腹に手を添えられる。
冷たくしても逆効果のようだ。
「吉徳はあたしが何したら嫌いになってくれる?」
そう聞いた。
吉徳は微笑み、
「お前が何しても俺はお前を嫌いにならないよ」
囁いた。

ぞくっと背筋に寒気が走る。

「気持ち悪いのよ」
と、もう顔色も伺う気力もない渚は吉徳を払いのけ、校舎内から出る。

まだまだ文化祭の客がたくさん歩いている。

とりあえず吉徳の顔すらみたくない渚は日陰の石畳に座り込みペットボトルのお茶を口に含んでいると、

「渚ちゃん。」
綺麗な脚が見えると思って顔をあげると、骸といたはずの女生徒。
不機嫌そうな顔で渚の前に立っている。

「あれ、骸は…?」
「吉徳君どこにいるかわかる?」
質問を無視されまったく違う質問をされた。
「は?」
「だからぁっ吉徳君は!」
「吉徳君はって…骸はどうしたのよ?」
渚の言葉にチッと舌打ちし、彼女は渚のペットボトルのお茶を奪い、少量だが渚にそれをぶっかけた。
周りの客があ然とした。

「…あー涼しいー」
と、渚は無表情で言いながら立ち上がり、彼女のペットボトルをとり、残りのお茶を頭からかけてあげた。

「気持ち良いでしょ?」
小さな悲鳴が聞こえれば、ヒューっと口笛をふくものもいた。
「可愛いよ」
「〜〜〜〜〜〜〜っ!」


そこへ

「渚…」
「っ…!」
骸だ。
彼女はさっきまでの不機嫌顔からうるうる顔に無理やり切り替え、骸のもとへ。
「骸さんっ渚ちゃんがお茶かけてきたのっ」
先にやったのはお前だけどな。

「……」
骸は渚のもとへ少し怒った顔で近づいてきた。
渚は骸のくる方から体を横にそっぽをむかせた。


骸が彼女をよくも、というように説教じみたことを言ってくると思った。
が、

「……っ?」

骸の着ていた上着を羽織らされ、肩を抱かれた。
そしてそのまま学校校門に向かう。

ドキドキする。

あたしに怒ってるんじゃないのだろうか?
いや、校門までつれてかれ、さっさと帰れと突き飛ばされるのだろうか。
なら、こんなのあんまりだ。

「ご、ごめん。謝るから、あの子のこといじめてごめんてば…」
いじめたわけじゃないが、
とりあえず傷つきたくなくて離れたかった。
「骸、離し…」
「見えてるんです。」
「?」
渚は骸の顔を見上げた。
暑いからか、顔が少し赤い。

「見せたくないんです。」
骸は渚に羽織らせた上着をとり、再び渚の鎖骨に渡す。
「あっ…」
お茶だ。
骸が言っているのは濡れたシャツで透けた下着のことを言っていた。

「わかってください。そのくらい。」
ドキドキがまた増した。

暑い。

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