15
「んー…」
何だか騒がしくて目を開けた渚。

顔だけ居間の方に目をやると骸と吉徳がにらみ合っていた。

骸と吉徳…。

骸と…よし…?

「吉徳っ…!?」
吉徳の影を見つけると体が恐怖に反応する。
渚の声に骸と吉徳が気付き、こちらを見た。

ゆっくり近づいてきたのは吉徳だった。
渚は吉徳に震えあがり、咄嗟に体を起して壁の方に身を寄せるが、体が変に重い。

渚の反応を見た骸が吉徳の腕をつかみ言う。

「渚乱暴したら…」
吉徳は骸をみてにやりと笑うと

「渚こいつお前利用してんだぞ?」
「「は?」」
二人の疑問の声が重なった。
「これ聞けよ」
吉徳は先ほど骸に見せたボイスレコーダーを取り出し、それを流した。


渚の喘ぎ声がしっかり録音されたもの。
渚は自分のそれに顔を赤くして言った。
「なっ!何それ…」
「この男…「この男が自分で録ってたんだよ」
「「はぁ?」」
またしても骸と渚の疑問の声が重なった。
「こいつがこれネットに流すんだと」
吉徳はボイスレコーダーをちらつかせながら言う。
骸は学校からネットに規模が広がってることに

「む、骸…」
渚の声は不安そうではあったが、骸を信じているという眼差しに、骸はほっとした。
「はい…僕はそんなことしません。」
骸は信じてくれる渚の瞳をまっすぐ見て言った。
渚がそんな骸にほっとした瞬間、

『君も見たでしょう?聞いてたでしょう?彼女の表情。彼女のよがる声。』
「え?」
「!?」
先ほどは聞かなかった音声。
吉徳はまたにやりと笑った。
そしてまだ残っていた。
『どうせ乱暴な君じゃ、彼女を精神的にも身体的にも満足させられないでしょう。』
「な…!」
不自然に途切れたものだけど、明らかに骸の声がそう言っている。
「何これ…」
こんな会話でもない音声でも、うまく録られているこの音声は、明らかに骸を最低な男として受け取れる一言一言だ。
吉徳にの都合のいいように録られている。

「なんなのよこれ…?」

先ほどとは違う渚の眼差しに骸は大きいショックを受ける。
いや、無理もない。だけど、信じ続けて欲しかった。

渚はぎりっと歯を食いしばり
「流せばいいよ…」
「え…」
「あ?」
今度は吉徳と骸の疑問の声が重なった。
渚は俯いたまま今度は叫んだ。
「流せばいいよネットでもなんでも!」
「渚…!」
渚は今度は静かな怒りに変わり、頭をかきながら
「吉徳ももう帰って」
だる気にそう言い放った。
「えぇー何で俺も…」
「帰ってよ」
「……」
吉徳も骸も黙りこみ、吉徳が先に部屋を出た。
骸もごろんと寝転がる渚の小さな背中を見て、吉徳に続き、部屋をでた。










翌日渚は頭痛に悩まされながらも起き上がってみたが、やっぱり体のだるさはあまりぬけていなかった。
渚は今日も学校を休もうと思ったのだが、進路に影響が出るほど休んでしまっているので、今日はだるさが残っていても学校に行くことに決めた。
もうあと数週で夏休みだというのに気分はそれどころじゃない。
もう夏休み近いため、今日の授業はあってないようなものだけど、夏休みに入る前に実は文化祭という行事があった。
渚のクラスはたこやき屋台ということになった。
朝の準備から夕方の後片付けまでみっちり渚は入らされている。
みんな部活動の出し物があるものはそちら優先になるので、部活なんてやっていない渚のような生徒がクラスの出し物をやるのだ。

結構そういう祭り行事は嫌いではない。
文化祭の日には丁度近くの河原で花火大会がメインの祭りもあるが、今年の渚は行きたくても一緒に行く相手がいなさそうだ。

文化祭をクラスのこたちと楽しみにしておこう。そう心のうちで一人思った。





今週の土日は吉徳は家に来なかった。

連絡が来ていたけど、今は極力関わりたくなくて、無視した。


そして骸からの連絡はずっと来なかった。
















その翌週。
文化祭も数日後に控えた日。
バイトから返ってくると部屋の明かりがついていた。
吉徳だ。
渚は深いため息をつきながら部屋に入った。

「おぉお帰り」
「うん…」
部屋が変に臭い。
「あぁ、わかる?わりぃわりぃ」
渚は呆れながらため息をまた漏らした。
「まぁまぁ」
服を脱がそうとする吉徳。
本当に勘弁してほしい。

「やめて」
「いいだろずっと放置してたくせによ」
その時、カンカンとこのアパートの階段を上がる音。
「ほら、聞こえるんだからよして」
「まぁいいじゃん」

居間にいるまま力で押し倒され、渚はまた何度目かのため息を漏らした。













夏なのにもっと気温が上がった。
荒い呼吸のままぐったりする渚に吉徳が満足げな表情で
「今日は良かったな。」
「…っ!」

そうだ。
今日は吉徳とでも初めて”感じること”ができた。
声がでた。
不覚にも気持ちいいと思ってしまった。
何故かすごく悔しかった。


絶頂を迎える少し前に再び聞こえた気がした階段を下る音が何故か一瞬脳裏をよぎった。

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