12
夕方くらいまで泣いていた気がする。
それで30、40分程寝ていたようだった。
冬ならもうすっかり暗くなってる時間でも
もうすぐ夏になる今の季節ではまだまだ空には赤みがある。


目は覚めても体がだるくて全く動く気になれない。

あぁ、明日からまたバイトだ。
明日には英語のテストが返ってくるかな。
あぁ、国語も返ってくるはすだ。


骸に会いたいなぁ。
会いに行っていいかなぁ。

お礼だよお礼。良い点取れたら何か買っていってあげよう。

あとそれから…


「っ…!」
涙が溢れる。
骸。

触れて欲しい。

涙が止まらない。



あたしだって、

あたしだってこんな痣つけるために吉徳と付き合ってるわけじゃない。
こうなるなんて思ってなかったよ。


誰といたって"友達の時点"では楽しかった。幸せだった。嬉しかった。
それは吉徳たって同じ"だった"。

でも、誰だってそれはみんな過去形になった。
付き合って、しばらくは続いたけど、何か違う気がして


吉徳との間では特にそうで
"男と女"を突きつけられているようで。


男の自分を見る目が変わった時が
あたしの幸せの最後な気がする。



でも、


骸にはあたしを見る目が変わって欲しいと思ってる。

違う。幸せを最後にしたいわけじゃ全くない。

違う。見る目が変わったのは



あたしの方だ。



渚は鏡に映る自分の首すじにある痣を撫でた。















翌日、顔の痣は大きい絆創膏で隠した。
だけど首筋や脚の痣は隠さなかった。
返って暑苦しいし痛々しい気もしたけど、学校の鏡を見たらどちらも痛々しい。

学校の友達には驚かれ、どうしたどうしたと心配されたが、渚はケンカと言っておいた。

それ以上は言うつもりなかった。吉徳の株を下げたくなくて言わなかったとかじゃない。
なんかすんなり言ったら、自分の株が下がりそうだし、プライドみたいなのがあった。




今日はテスト期間じゃないけど、もうすぐ夏休みだから1時すぎには家に帰れるだろう。
今日のバイトは4時から8時とわりと早めに上がりだ。

テストが返ってきた。

英語85点。国語92点。

結構良い方だ。
英語なんていつも70点近くまで行けば良い方だったのに。


渚はそのテストを鞄に入れ、
そして放課後、家で少し休みバイトに行った。














「お先に失礼しまーす。」
挨拶を済ませ、店を出る。
接客時はストッキングをはかされる。
学校からストッキングでいればよかったかもしれないと思いながら帰路につこうとすると



「渚っ!」
背中に投げられた声。
骸だ。

どうしよう。振り返れない。

渚はとりあえず気づかないフリをしながら歩き続けたが、

「渚!」
肩を叩かれてしまう。
振り返ったときには、骸も気づいた瞬間の顔だった。

「…こんばんわ」
と言って、へへっと笑って見たけど骸はだんだんと怒りを表すように眉間に皺を寄せて行った。

「…とりあえず車、乗ってください。」
骸は渚の手首を掴み少し強引に手を引いた。


そして車に乗ること数分、渚のアパートに。

渚の部屋に着くと渚が正座させられる。
「その大きい絆創膏は?」
「え、…えっと、痣です」
骸はふん…と鼻から少しため息をはくようにして
「彼氏、ですね?」
「…ん、まぁ」骸はそれで一層眉間の皺を濃くした。

「今日彼来るんですか?」
今日は木曜日だ。
「たぶん今日は来ないと思う…」
「……」
骸は渚の顔をじっと見つめる。

でも渚はその視線にどぎまぎしてしまう。
ドキドキして下しか見れない。

ふと見ると骸はすぐ目の前で、
びっくりしたけど目を逸らせなかった。
否、逸らしたくなかった。
渚が見つめ返すと骸も渚を見つめる目つきを変えた。
眉間の皺なんかとっくに消えてた。


渚は、はっとして、お風呂に入ってくると言って部屋をあとにした。
なんだかどうすればいいのかわからない。



今日はお湯で傷が痛まなかった。


すぐに入浴を終えた渚は骸と自分に簡単な夕飯を作る。
今度は向かい合わず、テレビを口実にお互い斜めになる形で座った。


夜10時近く。
2人でぼーっとテレビを見ていると骸が再び渚に声を振る。

「……脚にもたくさん痣があったんですね」
軽い服装でタンクトップに短パンだったから脚の痣も見せてしまっていたのに今気づいた。

「一昨日、はね」
「一昨日…?」
そこでお互い、顔を見合う。

「一昨日は僕と会った日ですよね?」
「うん…………、っあ…」
そうだ。
一昨日、骸と会った後だということは言っていなかった。

「もしかして…」
骸は再び眉間の皺を刻む。

「僕と会ってたことで殴られたんですか?」
「……そう、かな。そうだね…。」
骸の顔を見ると、眉間の皺が薄くなっていた。
渚をゆっくり見ると骸は

「良かったです…」
「え?」

「良かったです。彼に僕と君は男女の仲だと思われて。」
"男女の仲"という言葉にドキっとした。
「骸…?」
骸は膝立ちになり、渚の上に影を落とした。
そして渚の腕に手を添えて顔を近づけた。

ドキドキ

ドキドキ

2人の鼓動が重なった
木曜の22:00

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