11
「うぁ"っ!!」
手首を掴まれたと思うと肩が外れるのではないかと思うほど勢い良く引かれ、そして廊下に叩きつけられる。

素肌が摩擦で擦れる音が痛い。

それより、渚の心拍を上げていたのはその威圧感だった。
震える。

渚は恐る恐るそれを見る。

「何、してたんだよ…?」
静かな怒りの吉徳。
渚の口からひっ…と声にならない音が漏れる。
「えっ…ごめ…」
「何してたかって聞いてんだよ。」
渚はまばたきも忘れ、目をそらせず、身動きもできないまま震えた声で言う。
「ば、バイ…」
「バイトなんかなかったろ!!」
ガシャアンと割れた音は、吉徳が玄関の鏡を投げつけたからだ。
頬にピリッと痛みが走る。飛んできた破片で切れたようだ。

吉徳はその割れた鏡なんか気にしないでその上を歩き渚に近づいてきた。

「今日お前のバイト先行ったんだわ。お前いないから聞いたら…何て言われたかわかるよな?」
吉徳が踏みしめパキパキッと鏡の破片がまた割れる音と、そのあとに血が綺麗に光る。「……ごめ、ん」
その言葉に吉徳は
「ごめんって何だよ?あ?」
そう言い
「やっ!!」
渚の髪を無造作にがっと掴み上げ、しりもちをついていた渚の尻が宙に浮く。
「痛っ!離してっ…!」
吉徳はそのまま渚のベッドまで引きずるように渚を移動させる。

そしてベッドに強かに叩きつけると、渚の服を破る。
「あの男何だよ?」
「っ…!」
一番聞かれたくなかったその言葉。
渚が黙っていると




ガッ…
「っ…!」
腹を殴られた。今まで殴られたことはたくさんあったが、こんなに重いものは初めてだった。
そして吉徳は渚の腕を掴み、もう一方の腕を構えた。
渚はとっさに掴まれていない方の腕を顔の前にする。
「っや…!」
だけどそんなのじゃ庇いきれなくて、渚のこめかみ部分に吉徳の平手打ちがあたる。
平手でもかなり痛かった。
吉徳はその手を再び拳にした。
渚はそれを見て
「やっ…やだ!お願い…やめて…!」
溢れ出ている涙なんかもう邪魔だった。
自分を守るのに視界がぼやけてしまう。
吉徳はそんな渚を見てニヤリとし、
「あの男は何だよ?」
渚は
「っ…別に、友達だから…!」
そう言った渚に吉徳はまた今度は手の甲で渚の頬を殴った。
「ほっ…本当に友達なの…!何にもないよっ」
吉徳は破った服の隙間から覗く下着と胸の谷間を見た。

「あの男、見覚えあんだけど?」
ぎくりと肩が跳ねる。
そんな渚を見て吉徳は
「お前浮気してんの?」
「だから違っ!!」
ガンッ…
再びこめかみ部分を殴られたが一番重かったそれ。
本気の拳。
ぐぁんぐぁんと目が回る感覚。

息もできない。
怖い。
「あいつあれだろ?この前のでしゃばりだろ?」
渚はまだ目が回っていてうまく聞き取れなかった。
吉徳は
「お前もしかしてあの時点で知り合いだった?」
渚はそれは聞きとれてしまい、震えてしまった。

「おいおい…本当に知り合いだったのかよ?」
渚はまた黙っていると、吉徳は思い切り渚を蹴り倒す。
再びベッドに沈んだ渚の服を剥がし、下着も強引に取る。
「そんなにヤりたいならお前が泣きわめく程ヤってやるよ!」
渚の口に吉徳のものを突っ込む。
「んぐっ…んぁあ"!」

それからの記憶はあまりない。
けど苦しみだけは深く刻まれた。



次の日目覚めると体中痣とキスマークばかりで、吐き気がした。
特に顔は頬とこめかみにくっきりと痣が浮かんでいる。
吉徳はいなかった。
時間をみればもうお昼近く。
今日もテストだったのに…。
昨日せっかく勉強したのに…。


骸の優しい笑顔を思い出してしまい、虚しくなって泣いた。

号泣した。

こんなに泣いたのはおばあちゃんが亡くなって以来だ。

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