09
そしてついにテスト一日目。
骸の勉強の教え方はすごくわかりやすかったし頭に入ってきた。

ニ教科のテストを受けたが、いつもより手応えがあった。
それを早速骸にメールで伝えた。
するとすぐにメールがきて
『良かったです。今日は僕が渚の家に行きます。』
そうメールに書いてある。
じゃあ早く帰って散らかった部屋を少しでもかたそうとすぐに帰路についた。




テスト期間だから学校はすぐに終わる。
渚は骸の片付いた部屋を見て女の子である自分の部屋がこんなに散らかっているなんて恥ずかしいと思った。
言ってしまえばちゃんと男の子の部屋に入ったのは久しぶりで、

いや、"男性"の部屋に入ったのが初めてだった。


そう思った瞬間、片付けていた手が一瞬止まる。

「男性、か…」
渚は再び手を動かした。




午後三時。
インターホンが鳴る。
勉強するというのに憂鬱さは全くない。
「いらっしゃい」
「これ、あとで一緒に食べましょう」
と、たぶんケーキだろう。お菓子の良い匂いのする箱を手渡す。
「ありがとう。」
そういい、とりあえず冷蔵庫に入れておく。
そして、もはや吉徳の特等席ではなくなっている座椅子に骸を座らせる。
そして麦茶を出して今日も勉強する。


「ここが、…で、……になるので…」
「あぁ、そっか」
この時間は本当に心地良くて、自然と近くなる距離が息苦しくて、でもその息苦しさも好きだ。

ふと顔をあげると骸の綺麗な顔があって、自分の顔が恥ずかしくなった。




午後5時。
骸が持ってきてくれたケーキを2人で食べる。
「骸に教えてもらえると本当に助かる」
「お役に立てて嬉しいです。」
そして、骸の口から
「進路はどうするんですか?」
やはりあまり触れたくないけど、でも考えなければならない進路という話。

実はハッキリ決まっていない。
「就職もしたいけど、能力もないし…専門に行こうか大学に行こうか迷ってて…」
骸はじゃあ…!と身を乗り出して

「僕の大学に来ませんか?」
「え…?」
その一言で、渚の内から湧き上がる気持ち。

「渚が僕の大学にくれば、きっと今より毎日会えるし、毎日楽しいです!一年しか一緒にはいられませんが、僕は渚に来て欲しいです!」

渚は
「行く!行きたい!!」
心の内から嬉しさとか喜びとか、色んなわくわくが溢れる。

「あたし勉強頑張るから!」
渚のその笑顔に骸も微笑んだ。


そのあとは勉強なんかしないで、2人でずっと大学の話をした。

「先輩後輩で、学年が違っても学科で同じものがあれば、一緒にいられる時間もありますよ」
「楽しみだなぁ。絶対受かって欲しい。」
「受かりますよ渚なら」
「うん。ありがとう。」

胸の高鳴りが心地よかった。
ずっと一緒にいたいと思ってしまう。
吉徳には気をつかうし、ぶたれるし、神経ばかり使うし、そして身体ばかりを求められてばっかりで、
骸とこうして2人で笑いあって心地よさを感じてるけど
吉徳とは本当に身体ばかり繋がっていて心なんて縛られるばかりだった。



骸となら

と、一瞬考えてしまった。
骸との"エッチ"ならどうなんだろうと、
吉徳との"セックス"しかしらない。
気持ちよさ何て全くわからない。


ふと骸を見た。
目が合うが、すぐ逸らしてしまった。

女がはしたない。
骸みたいな仲良いと思っただけで何彼氏でもない人とエッチしたらとか考えてるんだろうと。


というか自分の身体がダメなだけなのだろうか。
渚は思い切って骸に聞いてみた。
「む、骸。相談してもいい?」
そう言うと何でしょうと少し微笑みかけてくれる。

「え、エッチが気持ちよくない!」
いきなり言い放ったそれに骸がびっくりした顔になる。
「え"?…あの、」
お互い見る見る顔を真っ赤にしていく。
が、
「吉徳との…」
その名がでると骸は眉をひそめた。
「乱暴なんですね?」
「わ、わかる?」
「わかりますよ。」
すこし拗ねたような、不機嫌な顔。

「あたしの身体が悪いとかじゃないのかな…?だって、処女じゃなくても痛がる人って…」
「男が女性に変な緊張感持たせなければそう痛くないはずです。」
そう真剣に考えて答えてくれたのが嬉しかった。

「やっぱり骸はあたしの良き"お兄さん"だな」
「そう、ですね…」

そう言った。そう自分に言い聞かせた。

そうだ。



骸はお兄さんだ。


骸の表情は見れなかった。

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