ウォルターはインテグラの従姉妹であるエリーゼに連れられ花畑に来ていた。

「懐かしいですなぁ」

インテグラ様とエリーゼ様お二人が小さかった頃、来ましたな、と言葉を続け目を細めた。その言葉にエリーゼも懐かしさを感じる。二人で花を摘んだり、花の冠なんかを作っていた。エリーゼは屈み昔のように花を摘みはじめる。

ヘルシング邸の手入れされた庭と違い自然の姿のままであるこの花畑は昔からエリーゼのお気に入りだった。はじめてウォルターが連れてきてくれた時は幼いながらに感動した。
インテグラがいないのは残念であるが内心、この広い花畑の中、自分とウォルターだけしかいないのが非常に嬉しくもあった。




「大きくなったらウォルターと結婚するー!」
「ウォルターは私の執事だからあげないわよ!」
「私のだもん!ねぇウォルター、大きくなったらお嫁にもらってね?」




「あの時のお二人は可愛らしかったですな。今ではこんなに大きくなられて……」

微笑むウォルターとは対照的にエリーゼは真剣な表情だ。何か気に食わないことでも言っただろうかとウォルターは心配になり声をかけると、エリーゼは花を摘む手を休めウォルターの老いてもなお美しい碧眼を見つめる。

「昔言ったことは本当よ。ウォルター、貴方が好き」

目を見開き、驚きを隠せないといった表情をするウォルター。

「…こんな老いぼれを?」

こくりと頷くエリーゼは依然と真剣な眼差しでウォルターを見つめる。ウォルターは深く目を瞑り冷静さを取り戻すとまるで壊れ物でも扱うようにエリーゼを優しく抱きしめる。
父親以外の男という生き物にはじめて抱きしめられたエリーゼの心臓は激しく音をたてた。長年恋い焦がれていた相手に抱きしめられるだけで息を吸うのさえ苦しくなる。
ウォルターは日の光に当てられ金色に輝くエリーゼの髪を撫で、一度身を離した。

「残り少ない人生ですが私と共に生きていただけますか?」

不意を突くようなプロポーズにどぎまぎしながらも了承する。その俯き加減の顔は嬉しそうに緩んでいた。
名前を呼ばれエリーゼは顔をあげると頬に手を当てられた。手袋越しの体温が心地よく感じる。目を閉じるように言われ言う通りにすると唇に何かが触れていた。目を開けなくても予想はつく。エリーゼの頬は自分でも分かるくらい熱くなっていた。
触れていたものが離れゆっくりと目を開けると互いに微笑みあった。


美しい花が咲き誇る中、誰も知らない二人だけの秘密の結婚式は始まった。











ウォルター老って素敵。



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