阿波まとめ | ナノ
09.夢主のピンチを助ける七年2



シュタッ!ばーん!

上空から華麗な着地後、そんな効果音のつきそうなポーズを決めた若者達。
魚の干物を担いだ茶髪の子、蜜柑の入った籠を大事そうに背負った子、奇妙なアヒルの頭を被った子、うどんを食べている子…後者二人を二度見してしまったのは仕方ないと思う。あの高所から着地しただけでも凄いのに、うどんの汁一滴零れていないとは。
ぼうっと見ていると、テンプレ通りに「見られちゃ仕方ねぇ」と襲いかかったならず者共があっけなく倒されていった。本当に一瞬の出来事で、苦戦を覚悟した私はなんだったのかと一瞬悲しくなってしまったが…それよりもお礼だ。


「大丈夫ですか?」
「はい。助けて頂きありがとうございました。強いのですね」
「それ程でもあります」
「あるんかい!?」


照れっとして蜜柑色の頭を掻いた少年に、アヒル頭を外した少年が突っ込んでいた。何やら楽しい集団だ。
しかし実際ならず者を倒したのは干物の少年一人である。干物を一振りしただけで大の男が吹っ飛んだ光景を私は決して忘れることは出来ないだろう。今度息子が帰省したら話してあげよう。きっと縦線の入った顔を愛らしく染めて興奮するに違いない。
暫く漫才を続けていた少年達は、ふと道の先に見える通りが陰っているのを見て慌てだした。


「しまった!時間過ぎてるよ!」
「ご馳走様でした」
「まだ食いよった!?」
「早よう行かぁ!」

「あ、」


何かお礼の品を…そう呼びとめようとした時、ばたばたと去って行く集団の一人が振り返って笑った。


「お姉さん、もう変なのに絡まれないよう気をつけてなー!」


………は?
固まる私を置いて、颯爽と去った彼ら。
気付けば倒れた男達は彼ら自身の着物でぐるんぐるんに縛られていて、自力で脱出は出来そうにない。アフターケアも万全な正義の味方に感謝の念が起こる…が。



「…私は、男ですぅぅぅ!!!!」



空しい叫びが薄暗い通りに木霊したのだった。








◆おまけ1

「それにしても別嬪さんやったねぇ」
「なー。大事なくて良かった良かった。へーのうどん病も偶には役に立つもんじゃよな」
「あのうどん屋は美味いんやけど、遊里を突っ切ってかなあかんのが面倒や」
「そう言いながらお持ち帰りまでしとったよね…」

「あいと、男やか?」
「「「えっ?」」」



◆おまけ2

「どうしたんだい、今日はやけに不機嫌じゃないか」
「いいえ、どうもしませんよ。それよりどうして貴方って人はこういう日に限っていらっしゃるんでしょうかね」
「いつも以上に険悪さを隠し切れていないよ。綺麗な顔が怒ると怖いこわ…」

「……私は…私は…男、です…」

「ええ、今度は萎れるの!?」



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この話で登場した夢主は連載夢「人形芝居」で主役をやっております。女装してる理由と愛息子についてはこちらの最初の方で説明してたり。



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