阿波まとめ | ナノ 五、住処について



しかし少し大きくなって自由に歩き回れるようになった弟は、拒絶どころか若芽の屋敷から俺の家までの道のりを歩いて通うことを覚えた。
何度危ないと言い聞かせても耳を貸さず、幼子の足で毎日通う小さな弟のために、俺と母は相談して若芽の屋敷に移り住むことにした。



「金時様、雲雀でございます」
「ほんまや。ほーほけきょて鳴くんかな」
「母さんそれは鶯じゃわ」
「ほーほけきょ」
「若芽ちゃん(さん)!?」

最初は戸惑い警戒の色を浮かべていた数人の奉公人達も、ぼんやりする若芽と日向ぼっこする俺と母の姿を見るうちに態度が軟化し、屋敷に押し入った盗賊を母が撃退したことで完全に打ち解けた。
とうに実家から見捨てられていた彼女達には、母がとても頼もしく映ったのだろう。
実際は父の妻と言うことで定期的に数人が見張りに寄こされていたのだが、彼女達は気付かなかったらしい。

「兄様、一緒に雲雀のカゴをこしらえてください」
「ええよー。やけど籠やのうて小屋にしよ。鳥は気持ちよぉに空飛ぶんが好きやけんな」
「…空を飛ぶ?それでは逃げてしまうではありませんか。風切羽を切ってカゴに入れてしまえば、そんな心配もありませんよ?」
「鳥に限らず、生きとるもんは自由に動いていつかはどっか行くもんじゃ。それに羽切ってひょこひょこしとるより、大っきな空いっぱいに羽広げて飛んどる方が綺麗じゃろ。な、小屋にしよ?庭に作って豆さんやってたら、雀も来るで」
「……はい。ではさっそく作りましょう」
「よっしゃ!上手に作って母さん達に見せたろな。ほな兄ちゃん道具取ってくるわ」
「ええ、お待ちしています……………自由に、どこかへ、飛んで行く…」


一緒に暮らすようになって、弟は一層俺に懐いてくれた。
子供は分け隔てなく扱う方針の俺の母はどちらも贔屓することなく扱ったから、俺と弟は一緒に食事をして風呂に入って布団で寝て滝に落ちた。
喧嘩もしたけれど、兄である俺が折れることが多かった。やっぱり弟は可愛かったし、母に「兄ちゃんやろ!」と怒られると反射的に謝ってしまう。

それに、喧嘩をすること事態も稀だった。
基本的に巣立は家族を好きなようで、特に俺の言うことはよく聞いてくれたから。



[11/02/14]



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