阿波まとめ | ナノ ミルクティーと飴玉



「ほれ」
「…なん?」
「生姜ミルクティー。これなら甘いから飲めると思ったんちゃ」

ふわりと立ち上る湯気に誘われてふらふらと近付けば、とろりとした乳白色が薄く茶色に染まるなんとも美味しそうな色。ゆるキャラで知られるクマのマグカップに入ったそれと黒部を交互に見て、阿波は熱特有の真っ赤になった顔をふにゃりと笑み崩れさせた。

「ええん?」
「風邪ひいたって聞いて作ったんやし、飲んでもらわな。俺特製、元気になるお薬なんぜ」
「へへ…七尾ありがとさん」
「どういたしまして。そんならゆっくり寝られま」
「……あ!待ち待ち!」

マグを渡して部屋を出ようとする黒部を、慌てたように阿波が呼び止めた。
何事かと振り替えると、机の上に投げ出していた鞄にすがりついて何やらごそごそ探っていた。布団から半分以上飛び出した状態に眉を潜め、大人しく寝ているよう叱りつけようとした所で「あ、あった!」と嬉しそうな声が響く。

「ほれ、七尾。これやるわ」
「……のど飴?」
「なんや七尾も気分悪いんとちゃう?それな、具合悪いときに舐めるとすっきりするんよ」

わいのとっときなんやけど、これのお礼な、と阿波はマグを持ち上げてにっと口端を上げた。先程より元気な笑み。これなら治りは早いだろう。

「ありがと。遠慮なく貰っとくね」
「わいもだんだん〜」
「っふふ。伊予くんの真似、似合わんぜ」

部屋を出るとき、ふわりとミルクティーの甘い香りが背を押した。
手の中の小さな包装紙にくるまれた飴も同じように甘いのだろうなと想像して、黒部も小さく笑った



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