阿波まとめ | ナノ 精一杯の甘々



「湖滋郎はわいをどう思ってますか、と言ってみるテスト」
「そんなに堂々と何言うてんの…」

寮の部屋でベッドをごろごろと転がる阿波と、椅子に座って雑誌を見ながら呆れた声を出す近江。
こちらを一切見ない部屋の主に、阿波は不満そうな顔をして、次の瞬間にんまりと意地の悪い笑みを溢した。

「なーなー湖滋郎ー」
「なにー」
「好き」
「……は?」
「あ、赤うなった」
「…いきなり変なこと言うからや」

雑誌からようやくちらりと視線を移した近江を、じっとベッドから見上げてくる阿波は悪戯が成功したと満面の笑みだ。その嬉しそうな顔に若干イラッとする。

「吉野君、あんたな」
「んー?あ、たまには吉野って呼び捨てにして。んで大好きとか言ってくれたら尚良し」
「……ほんま何言うてんの…」
「や、たまには甘いのもええじゃろ。主にわいに」
「よくないわ。ほたえるんもいい加減にしとかな、今すぐ粗大ごみとしてふてるで」
「わい放られるん!?」

でれでれと笑み崩れていた顔が、一気に青褪めてベッドを後退りする様子に近江はにやりと口端だけで笑う。分かりにくいが、その瞳は先ほどの阿波と同じ色をしていた。
…つまりは、悪戯を思いついた、と言わんばかりの色。
椅子を立ちこちらに向かって来る近江のその表情に不穏な気配を感じさらに下がろうとする阿波だったが、時すでに遅し。すっと近付いてきた顔が重なって、ほんの数ミリ先で一旦止まり一言。


「ふてられたくなかったら、精々頑張り、吉野」


近江が離れると、真っ赤になった阿波が眉を下げ、なんとも情けない顔をしていた。



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