阿波まとめ | ナノ 電話にでんわ



「祭、昨日なんで電話出てくれへんかったん?用事?」
「え?」

寮の食堂で顔を合わせた途端言われた言葉に、花笠はきょとんと首を傾げた。
それを見た阿波もえ、と首を反対側に傾げる。
しばし斜めの角度から無言で見つめ合う二人だったが、最初に阿波が耐えきれず「うぇー」と首を元に戻してぼやいた。

「なんや気付いてなかっただけかい。なんぞあったんかいなって心配しとったんに」
「えー?んー?」

阿波の言葉に覚えのない花笠は眉間に皺を寄せて考える。昨日。電話。出なかった。…電話?

「あ、あの電話、吉野だっけのか?」

昨日外で友達と食事をしていると、知らない番号から電話がかかってきた。
不審に思いながらも渋々出てみると、電話口からは「ざー…しゅこー…ざー」と砂嵐の様なノイズとそれに紛れてか細く聞こえる某ダースベ●ダーの様な息の音。思わず切ってしまった自分に非は無い、はずだ。
花笠の内心など知らず、阿波は「そうそう、それ」と頷いた。

「なんや電話して『祭ー』て呼んどるのに、おまはんぶつぶつ喋るばっかで一向に反応せんのやもん。電波が悪いんかと思うて一旦切ってかけ直そうとしたらぷちっと切れるし。その後どんだけ電話しても出てくれんし。なんやわい、嫌われてもうたんかなって焦ったわ」
「……えー」
「阿波…それって…」

なんとなく話を聞いていた周りが、ざわりと揺れる。言われた本人も若干引け腰だ。それに気付いた阿波が目をぱちくりさせた直後、振りかかる粉。もとい塩。

「うぉっ!?な、何するんよおまはんら!」
「うっさいお清めじゃ!」
「今日の放課後は祭と一緒に寺行って来い」
「ついでに七尾と大地も」
「おれと七尾くんは関係あれへんよね!?」

食堂にいた面々が豆まきの様に順々に阿波に塩を投げつける。
グレーのカーディガンが真っ白になった頃ようやく解放された阿波は、まだ事態が飲み込めていないという顔で、「どうしてこうなった」と呟いたのだった。



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