阿波まとめ | ナノ
うどん…(○□○)



とある休日。
阿波は用具委員会のおつかいで町に来ていた。
一人でなのは、本当にちょっとしたことだったのでせっかくの休日にわざわざ後輩を連れてくる程ではないな、と考えてのことだ。
学園から担いできた小さいなりに重い荷物を先方に渡して、ようやく用事が終わった。ほっと肩の力を抜いた阿波は、さて帰ろうという段になって近くのうどん屋からいい匂いがすることに気付いた。

「うどん…」

自分達の学年にはうどん作り…というかうどん自体に並々ならぬ情熱をかける奴がいる。なのでうどんは嫌になるほど食べている、のだが。

「この腹から響く切ない音…どういうことなん…うどん化計画は完了しつつあるっちゅうことか…!?

きゅるる…と寂しそうな腹の音に、若干戸惑ったが、結局風にひらひらと揺れる暖簾をくぐってしまった。
店内はがらがらに空いており、まさか自分しか客がいないのだろうか、と思いながら阿波がカウンターに近づいたときだった。

「おばちゃんありがとー!最後の一玉なんて俺ツイて」
「うぉっ」


ばしゃーんっ


カウンターの横の戸口から飛び出てきた讃岐に、思わずぶつかってしまった阿波。それだけならまだいいが、お互い普段から見知った気配な上に今は休日の町中。しかもがらがらのうどん屋さん。完全に油断していた二人は、咄嗟の事態に対応出来なかった。

すなわち、讃岐の持っていた丼が衝撃で落ちるのを、ただ見ているしか。

「……す、すまん、へー…」
「…………」
「平野さーん…」
「…………」
「平野、さま…」
「……最後の」
「え?」

目を丸く見開いて地面に落ちたうどんを凝視していた讃岐が、長い沈黙の後、ぽつりと呟いた。明らかに自分が悪いと分かる状況にどうしようと慌てていた阿波は、その声に必死に耳を傾ける。


「最後の、一玉だったん」


あ、オワタ。
その一言が頭を凄い勢いで駆けて行った。





その後数日間、まるで従者のように讃岐に従う阿波の姿があったとかなかったとか。



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