阿波まとめ | ナノ
弁当争奪戦



「うへへ」

なんとも気味の悪い笑い声を溢した犯人を見ると、なんとも締まりのない顔で弁当箱を見つめる阿波の姿。
学園長の思い付きで急遽決まったこの大運動会だが、七年生は参加しない。だから各々が好き勝手各自の後輩を応援したり茶化したりしに行っている。
そんな中、によによと弁当箱を持って何処かへ行く阿波。うん、気になる。

「吉野、それどないしたん?」
「おー平野!これな、最上が作ってくれたん。美味そうな匂いじゃろ?なんと蛸の唐揚げも入っとるんやで」
「えぇ!吉野の分だけか!?」
「ちゃうちゃう。祭に作ったおこぼれで、わいと柚葉にも作ってくれたんよ。やー今日は朝っぱらからなんぞ幸先ええな!」
「うう…俺もその場におればよかった…!」
「またの機会に作って貰え」

ふはは、と勝ち誇ったように笑う阿波に、讃岐はぎりりと歯を噛みしめる。
七年の中でも料理上手の一人である羽前の作るご飯は、とても美味しい。それもあるが、なんだか勝ち誇った阿波に無性にイラッとする。
讃岐がすっと取り出した麺棒を見た阿波が、ぎょっと目を剥いてその場を飛び退る。

「ちょ、火薬入りは禁止されとうじゃろ!?」
「なんだか苛々した。理由はそれだけで十分だ」
お、男らしくて格好良い…!けど言ってることは理不尽極まりない!」

ごごご、と背後に何かを背負い重々しく言いきった讃岐。一瞬きゅんとしたが、どう考えてもおかしい。
我に返った阿波はそのまま木の枝に乗り屋根を伝って逃走した。

「わ、わいは今からこれを留に見せびらかして作達とのんびりお弁当タイムなんじゃー!」
「うっさい寄こせぇぇぇ!!」
「ぴぎゃぁぁぁ!!」

阿波が無事に留に弁当を見せびらかす事が出来たのか、それはまた別のお話である…。



prev/top/next
「#寸止め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -