阿波まとめ | ナノ
悪夢を見ました3
「時代先生ぇぇぇ!ちょ、何処も行かんとってせめてわいらの進路が決まるまではぁぁぁ!!」
「お、れ、は、食満留三郎ですぅぅぅぅぅ!!!!」
「だから煩いってば」
夜も更け、静かなはずの六年長屋に響き渡る騒音。
鍛錬や予習で起きていた者達は「またか」と呆れ、既に寝ていた者達は「またか」と舌打ちした。
特に震源地である六年は組のとある部屋では、部屋主の片割れが米神にありえないくらいの青筋を浮かべていた。普段が優しいお兄さん風なだけあって、その変貌ぶりは凄まじい破壊力だ。
そんな同室者の姿に頭の中の警報機が最大出力で鳴り響いていた食満だが、物理的にも終わりが近かった。
考えてみて欲しい。無防備に寝ている最中、突然万力によって全身を締め付けられたらどうだろうか。驚きに目をかっと見開けば、そこには自分の背に頭を押しつけて蛸のように拘束してくる七年生。しかも若干海老反りの体制である。はっきり言って苦しい。というか痛い。というかお迎えが来る。
そんな瀕死状態の食満を神々も哀れに思ったのだろうか。これ以上絞められたら折れる、というギリギリの瞬間、ガターン!と音を立てて戸が開いた。
「吉野!後輩に迷惑かけるんも程々にせぇ!」
「というか煩くて寝られへん」
「そろそろ安眠できるように、お薬調合しよか」
ぞろぞろと現れた七年生の面々に、青筋塗れでびっきびきだった善法寺も驚いたのか元に戻った。
すっと進み出てきた讃岐が寝ぼけて後輩をぼっきぼきにする寸前だった蛸、もとい阿波の頭を勢いよく叩く。麺棒で。
続いて他の面々も忍たまの友や硯、棍や番傘やオコゼで順に叩いていく。
「がっ、きゅ、ぶあ!?」
「ほれ、これで最後じゃ阿呆」
「みっ」
最後にもう一度、勢いよく麺棒を打ちこまれて阿波の全身から力が抜けた。
「よし、撤収じゃ」
「「「おー」」」
くたりとした阿波を数人が抱え、さっさと部屋を出て行く暴漢…じゃなく、七年生達。
解放された食満はぜーぜーと肩で息をしながら、ぞろぞろと帰って行く後ろ姿達を開きっぱなしの戸越しに眺め、もしかしたら先輩を一人失くしたのかもしれないと覚悟した。
「おや、吉野君。なんだか今日はたんこぶだらけですね」
「ほやろ?なんや起きたらこんななっとってなぁ…寝とう間にどっかぶつけたんかなぁ?時代先生も寝相には気ぃつけて…あ、留!今日委員会で縄梯子をなー」
「生きてた!」
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