阿波まとめ | ナノ
悪夢を見ました2



「…はぁ、これで何度目っすか」

呆れたような溜息に、じとりとした目で返したのは後輩の布団を占拠していた阿波だった。

「わいは七年生様やで。もっと敬え崇め奉れひれ伏せ土下座して命乞いをしろ」
「そんな尊大な物言いしたことないでしょうが。慣れない事してると舌噛むぞおらもっと奥行け奥」
「先輩やのに…」

最近扱い酷くない?ともぞもぞ奥へと大人しく移動する。鍛錬が終わって井戸で汗を流したばかりの食満はひんやりとしていて、その冷たさから逃げたいというのもあるようだ。
すー、と寝息をたてる善法寺を気にしながら、食満はなるべく物音を立てないように布団に潜り込んだ。いつからここにいたのか、布団はじんわりと温かい。気付けよ伊作、と食満は思ったが、ただでさえ気配を読みにくい七年生な上に、昔から何かにつけて親しくしている先輩が相手では無理がある。
ぼんやりと考える食満の横で、阿波は反対側に丸まりながらぽつりと溢した。

「分かっとるんやけど、でも辛いもんは辛いんよ。きっと七年の誰がそうなっても、わいは泣くで」

かたかたと震える体は、寒いからだけではあるまい。そういえば睨む目も腫れて赤かった。食満はじっとそれを見て、心持ち柔らかい声をかけ、

「…仮にも先輩でしょうアンタは」
「忍務中はそれに集中出来る。ほなけど、わいは人間やけんな。悲しいと泣くし、楽しいと笑う。留作達にもそうあってほしい」
「吉野先輩…」
「ほんでもうちょっと優しくなってくれたら嬉しい。へー達んとこ号泣しながら突撃したらうっかり罠踏んで寝ぼけた奴らに吊るし上げられた…七年怖い…トラウマんなるで…」
「アンタ結局それか!」

優しくしたことを後悔した。
げしげしと布団から蹴りだすと、かけ布団の端をきっちりと体に巻きつけてもう入れないようにしてしまう。一気に外気に晒された阿波は、縋りつくように布団を揺すった。

「ちょ、留酷い!先輩苛め反対!やめてそこはさっきボコられたときに痣になって」
「知るか部屋に帰れ!」
「ぎゃいん!」
「うるせぇ!」
「二人とも煩いよ…?」
「「すんまっせん!!」」

あわや喧嘩かという段になって地獄からの使者が覚醒したことにより、ぶるぶる震える二人は部屋の外へ叩きだされたのだった。



「ほな次は誰の部屋行こか?」
「当然のように俺に聞くなよ!」


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勝手に夢オチにしてますが、きっと並行世界ではガチ話。たぶん阿波はどの世界でも友人達の死を知り泣きます。やる事はやるけど、その後で大号泣します。上で。



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