阿波まとめ | ナノ 忍といふもの2



全ての始まりは何処だったのだろうか。
阿波が思うに、それは全てあの日、あの女が落ちてきたことから始まったのだろう。

「天女様が降って来たんです」

楽しそうに言う後輩の頭を撫でながら、はてそれは何処の出し物かと訊ねた。すると後輩はその福々しい頬をいっぱいに膨らませ「違いますよう」と否定する。

「今日、学年対抗オリエンテーリングの最中に空から降って来たんです!」
「とっても綺麗で、変な着物を着てました!」
「とりっぷとからくらんとか、不思議な言葉を喋ってました…」
「ほお、それは大層不思議なことだ。ところでその天女様、今は何処にいるのかな」
「学園長の庵!行く所が無いから置いて下さいって頼むんだって」
「違うよ、それで用務員さんになるって小松田さんと吉野先生の所だよ」
「はにゃ〜、その後食満先輩達とお話ししてた」
「留と?」

留達六年が動いたのなら、その怪しい女もどうにかするだろう。自分達が動く必要はない。
俺はのんびり寝転がって、楽しげに『天女様』とやらの話をする一年生達を眺めていた。

(…にしても、あの学園長がほない怪しぃ女を易々と置くもんやろか?)

何故このとき、俺は疑問に思わなかったのだろう。
胸の内ではざわりざわりと、何かがおかしいと告げていたのに。



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