阿波まとめ | ナノ 忍といふもの1



「一同、異論はないか」

讃岐の声が、静かな部屋にぽつりと落ちる。
真ん中に置かれた行燈一つきりが照らす薄暗い部屋の中、ずらりと車座に座る面々の表情は皆硬く、そして冷えていた。

「俺は是」
「俺も是」

讃岐の両隣に座っていた阿波と勝尾が、抑揚のない声で答えた。それを皮切りに、順に声が上がる。
ぽつり、ぽつり、全ての声が答えた所で、また讃岐の声が落ちた。

「…では、全員一致で決定とする」

誰しもが、いつもの気楽さを潜めていた。方言すら控えた一同の空気は、まるでそう、『駒』としての忍そのもの。
そしてその決定を待っていたかのように、三方から声が飛んだ。

「火薬は隠し庫の火薬を、生物は狼とありったけの毒虫を用意。笛の音に気付かれるな」
「保健は毒を用意。作法と一緒に先に行って撒いて来い。…ああ待て、不足の事態に備えて俺も行く」
「では俺と用具、図書は仕掛けられるだけの罠とからくりを。場所は裏々々山まででいいだろう」

かつて学級委員長であった者達が、かつての総称で仲間に指示を飛ばす。飛ばされた者は浅く頷き、同じ委員であった者達と短く視線を交わした。
最後に、決議を取った讃岐が遠くを見るように目を細め、次いで膝を打った。

「では会計と体育は用意が終わるまで、周辺の掃除を。これにて解散。一同一刻の後、戌の二、申の四に集合」
「「「応」」」

答えた瞬間、部屋の中の全ての気配が消え、燃えていた行灯の芯がじじ、と音を立てた。



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