おはなし | ナノ 拍手ログ06/伝七



一年い組の伝七くん。可愛い可愛い伝七くん。
今日も今日とてツンツンツン。たまにデレてご馳走様。


「名前…涎を拭け」
「これは流れ出る聖水だ」
「涎以外の何物でもない」


煩い立花である。作法委員長だからって伝七くんに全幅の信頼を寄せられて、しかもこないだなんて姿勢の講義とか言ってあの幼い肢体に手を…手を触れ…うぉぉ羨ましいいいい!!!!


「黙れ変態。そして涎を拭け。作法室が汚くなる」
「変態ではない恋の観察者だ。そして神から出るもんはなんだって神聖だからな。これで作法室も黄金の輝き」
「黙れ変態。そして鼻血も拭け」


煩い立花である。ほんの数年前まではコイツも可愛かったのに、今じゃこんなんだよ。口煩いし筋張ってるし、ほんと残念。


「私的にはお前の方が残念だ。神々しくて格好良いとか思ってた昔の私爆発しろ」
「今でも神々しく格好良いので安心しろ。お前の目は正常だ」
「異常だった。今私は過去の過ちを素直に認めたい。こんなのが作法委員会に伝わる古文書の神とか。燃やしたい」
「洒落にならんのでやめるように。俺様の野望を打ち砕く気か」
「野望?」
「数年後、委員長となった伝七くんに受け継がれる俺。四六時中一緒。病める時も健やかなる時も一緒。なんて天国だろうか!」
「今決定した。作法委員長は兵太夫になるよう手配しよう」
「NOOOOOOOOO!!!!!?おまっ、何考えてんだ馬鹿!」
「可愛い後輩をみすみす貴様の毒牙にかけてたまるか!それに貴様、常時病んでるから健やかなるときなどないだろうが!」
「いつだって健やかだよ清いよ神様だもん!」
「だもんとか言うな気持ち悪い!」


ぎゃあぎゃあ騒いでいると遠くから作法室に歩いてくる足音を感じた。この歩調は愛しの伝七くん!
今日こそ俺様の存在を知らしめんと胸を張って障子に…


「あ、おいこら立花!何すんだ!」
「やかましい。お前はそこで大人しくしていろ馬鹿」
「馬鹿はお前だろ!出せこらっ」


押し込まれた葛篭の中でじたばたもがくが、本体の古文書がきっちりと封されているせいで出ることが出来ない。畜生、今日も可愛い伝七くんに会うことが出来なかった…!
俺は残念な気持ちのまま、暗い葛篭の中で、襲い来る封印の眠気に大人しく瞼を閉じた。





「立花先輩!委員会まだですよね」
「ああ、私もさっき来たところだよ。伝七は早いな」
「そりゃあ、優秀ない組ですから!………あれ?先輩、ここ濡れてますけど…雨漏りですかね」
「かもな。よし、今日は留三郎でも呼んで修理がてら茶会にするか。茶の作法は覚えているな?」
「はい!」


立花仙蔵は笑顔で頷いた後輩の頭を撫でつつ、彼にしては珍しく葛篭を開きっぱなしだった押入れに蹴りいれた。



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