おはなし | ナノ
拍手ログ04/三治郎



三治郎は長期休み、とある山で父親と山伏の修行をしています。
というわけである日の修行中、一人岩の上でうんうん座禅を組んでいると、ぬっと体に回される腕。


「三ちゃんお久〜」
「うわぁっ!」


びっくりして振り向けば、とても近いところに満面の笑顔。
その顔を見た途端、三治郎はむっと頬を膨らませました。


「もう、邪魔しないでよ天狗!」
「そう邪険に扱うなってェ。久々にちんまいのがいるからわざわざ来たのよ、俺様」
「来なくていいよ!」


天狗と呼ばれた青年は、大きな体躯で小さな三治郎の体を抱き込んでまるで犬にするかのようにわしわしと頭を撫でてきます。
三治郎の頬は限界まで膨らみ、それを見て天狗はまた笑うのですからなんとも悪循環。


「何怒ってんの。ずっと来なかったのは三ちゃんでショ」
「だって…だって僕は、学園に入ったんだもの」
「へええ、あのちんまいのがもう学問を学ぶ年に」


本気で驚いた風な天狗に、さらに三治郎は怒ります。
まったくこの天狗は、昔から三治郎が一人で修行するたびに現れてはからかって、楽しむのですからタチが悪い。
ですが…


「でも良かったなァ。楽しいんだろ?」


寂しいと思ったときに傍にいて、友達のいなかった三治郎と遊んでくれて、時には共に悪戯をして怒られました。
年の離れた友人のような、兄のような天狗は、三治郎のことを自分のように喜んでくれます。


「うん、楽しい」
「同い年の友達出来たか」
「うん!一緒にカラクリ作って悪戯もしてるよ」
「そりゃ学園も災難なこったなァ」
「ねぇ天狗」
「んー?」
「…心配してくれて、ありがと」


父親に聞きました。この山にいる間は、何かに守られているのか怪我ひとつ負ったことはないと。
三治郎が学園に行ってからしばらくして、山伏の格好をした息子の友人を名乗る男が、三治郎は無事なのかと尋ねにきたこと。
天狗にあったことが無い父は、不思議な青年だったと笑っていました。


「…三ちゃんは、ちんまいから心配なんだよォ」
「うるさい!」


今におっきくなるんだから!
そう宣言した三治郎を眩しそうに見て、天狗はにやりと笑いました。



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